2. 貯血式自己血採血の現状と問題点

• Published in: 日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 53; no. 6; pp. 642 - 643
• Main Authors: 大野里美, 琴尾泰典, 井上千加子, 廣瀬一
• Format: Journal Article
• Language: Japanese
• Published: 日本輸血・細胞治療学会 2007
• ISSN: 1881-3011

岐阜県総合医療センターは, 岐阜県の東部にある, 診療科26, ベッド数590床の, 高度救急医療を中心とした地域支援型の病院である. その中で自己血を貯血依頼のある診療科は, 外科, 心臓呼吸器外科, 整形外科, 泌尿器科, 産婦人科, 脳外科, 耳鼻科, 口腔外科, 皮膚科, 小児心臓外科の多科に及ぶ. 自己血採血の依頼は電話で受け, その後の採血予約, 払い出し等の管理は電子カルテシステムで行っている. 採血基準は, 原則としてHb値11.0以上, 穿刺できる静脈があること, 活動性の感染がないこと, 採血前3日以内で抜歯等の歯科処置を受けていないこととしている. 自己血採血の手順は, 患者様が来院されたら, 1. カルテと患者様本人であるか確認, 2. 採血のバッグに自署してもらう, 3. バイタルサインの確認, 4. 採血部位の十分な消毒, 5. 清潔操作での穿刺(初流血10ml廃棄), 6. 採血中の観察, 7. 採血後の補液(鉄剤の使用), 8. 採血後の注意事項などのオリエンテーションである. 採血時間もストップウォッチで計測し, 400mlで15分から20分で採血できるようにしている. 採血にかける時間を設定してからは, ほとんどVVRの発生はみられていない. 採血時の観察の記録は, 自己血採血看護記録が電子カルテに入力され, 依頼された科でも採血時の患者様の状態がわかるようなシステムとなっている. 自己血採血後は, 3時間以内に分離を行いMAP製剤とFFP製剤にして, 手術の当日まで輸血部で管理している. 依頼があれば, クリオ製剤も作製している. 自己血採血時の問題点は, 自己血採血の採血基準(Hb値, 血管など)が満たされていない場合もあり, 採血に来院されても自己血が採血できなかった場合もあるので, 採血依頼科との連絡が重要になってくる.