31.抗HLA抗体検査における蛍光ビーズ法FlowPRAの導入

【はじめに】血液センターにおける抗HLA抗体検査の標準法はAHG-LCT法であるが, AHG-LCT法では検出できない低力価抗体を検出するために, 従来のAHG-LCT法に加え, 高感度の蛍光ビーズ法FlowPRA(Screening)を導入した. 【原理】FlowPRA(Screening)は, 30種類のセルラインより精製されたHLA抗原をコーティングした30種類のビーズをプールした試薬である. 30種類のHLA抗原タイプには, 主要抗原および多くのレア抗原が含まれている. ミクロビーズにコーティングされた精製抗原と結合する血清中の抗HLA抗体をFITC標識抗体で蛍光標識し, フローサイト...

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Published in日本輸血細胞治療学会誌 Vol. 53; no. 1; pp. 90 - 91
Main Authors 黒田ゆかり, 徳永倫子, 山口惠津子, 朝倉健, 徳永和夫, 佐藤博行, 柏木征三郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血・細胞治療学会 2007
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Summary:【はじめに】血液センターにおける抗HLA抗体検査の標準法はAHG-LCT法であるが, AHG-LCT法では検出できない低力価抗体を検出するために, 従来のAHG-LCT法に加え, 高感度の蛍光ビーズ法FlowPRA(Screening)を導入した. 【原理】FlowPRA(Screening)は, 30種類のセルラインより精製されたHLA抗原をコーティングした30種類のビーズをプールした試薬である. 30種類のHLA抗原タイプには, 主要抗原および多くのレア抗原が含まれている. ミクロビーズにコーティングされた精製抗原と結合する血清中の抗HLA抗体をFITC標識抗体で蛍光標識し, フローサイトメーターで測定する. 結果は蛍光強度を横軸に, ビーズカウントを縦軸にとりそのピーク形状から判定する. そのピーク形状がシングルピークを示したときは陰性, マルチピークを示したときは陽性と判定する. 【方法】病院から抗HLA抗体検査依頼を受け, AHG-LCT法で陰性となった検体についてFlowPRA(Screening)を実施した. FlowPRA陽性患者はPC-HLAの適応とし, ドナーには患者のHLA抗原タイプまたはそれに近いタイプを選び, 交差適合試験(AHG-LCT法)において陰性のものを供給した. PC-HLAを供給した血小板輸血不応(PTR)患者において, 輸血効果を調査し, 輸血後の補正血小板増加数(CCI)が輸血後1時間値1. 0以上または輸血後24時間値0. 5以上を効果あり, CCIが輸血後1時間値1. 0未満または24時間値0.5未満を効果なしと判定し, 評価した. 【結果】2005年6月から2006年8月において, 抗HLA抗体検査でのAHG-LCT法陰性例89例についてFlowPRAを実施した. 89例中FlowPRA陽性は32例(約36%)であった. そのうちHLA適合血小板を供給した患者で, 輸血効果評価可能例は17例であった. 強い出血傾向や発熱, 感染症などの輸血効果に影響を及ぼす因子があるものについては除いた. 輸血効果の評価可能であった17例中16例を輸血効果あり, 1例を輸血効果なしと判定した. 【まとめ】高感度であるFlowPRAを用いることで, AHG-LCT法陰性となる低力価抗HLA抗体の検出が可能となった. また, AHG-LCT法での被検血清中の治療で使用される抗リンパ球性の薬剤が影響する, 補体非結合性の抗HLA抗体は検出できない, 使用するパネルによっては抗HLA抗体を検出できない等の弱点もカバーしている. 原因が不明である血小板輸血不応(PTR)の原因の一つとして低力価抗HLA抗体の存在があると考えられるが, 抗HLA抗体検査にFlowPRAを併用することにより一部のPTR患者に有用であると思われる.
ISSN:1881-3011