12. TRALI(Transfusion related acute lung injury)の2症例

症例1は63歳女性. 肝硬変, 狭心症にて加療中, 貧血に対しMAP輸血を受けたところ, 呼吸困難が出現. 3時間後には胸部レントゲン上, 両肺野に急速に進行する肺うっ血像が認められた. 体外循環を併用したが, 代謝性アシドーシスが進行し, 輸血から28時間後に死亡した. 症例2は40歳男性. 交通事故による視床出血にて入院中の腹膜透析中の患者. エポジン皮下注射にても進行する腎性貧血に対し, MAP輸血を受けたところ, 呼吸困難が出現. 低酸素血症および胸部レントゲン上, 気道狭窄所見が認められた. 酸素投与を行ったところ改善した. 2症例とも, 輸血後に呼吸困難が生じており, その他, 呼...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 52; no. 1; p. 92
Main Authors 島津裕, 内山達樹, 佐藤亜紀, 齊藤誠司, 佐藤貴之, 前田猛, 大西達人, 水谷知里, 松山文男, 遠藤智子, 大渕貴美子, 薮田吉弘, 中村愛子, 佐々木博美, 四木行永, 坪井浩美, 渡辺幸子, 上田恭典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2006
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Summary:症例1は63歳女性. 肝硬変, 狭心症にて加療中, 貧血に対しMAP輸血を受けたところ, 呼吸困難が出現. 3時間後には胸部レントゲン上, 両肺野に急速に進行する肺うっ血像が認められた. 体外循環を併用したが, 代謝性アシドーシスが進行し, 輸血から28時間後に死亡した. 症例2は40歳男性. 交通事故による視床出血にて入院中の腹膜透析中の患者. エポジン皮下注射にても進行する腎性貧血に対し, MAP輸血を受けたところ, 呼吸困難が出現. 低酸素血症および胸部レントゲン上, 気道狭窄所見が認められた. 酸素投与を行ったところ改善した. 2症例とも, 輸血後に呼吸困難が生じており, その他, 呼吸困難を来たす疾患が否定的であったことから, TRALIの可能性が高いと考えられる, また, 本症例では, 2症例ともに患者血液検体より輸血ドナーに対する抗顆粒球抗体が認められていることから, 本病態への抗顆粒球抗体の関与が示唆される. TRALIの病態は未だ不明であり, 診断が困難であるが, 治療として陽圧換気補助により呼吸状態の改善が認められることがある. よって輸血に伴い生じた呼吸不全患者を診た際には, TRAILを鑑別に考え, 早期治療を行うべきである.
ISSN:0546-1448