S-1. 当院で試みた輸血によるC型肝炎患者の掘り起こしについて

【背景】輸血などの医療行為に伴ってC型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているにもかかわらず, この事実を知らずにいる人の多いことが社会問題となりつつある. 1989年11月以前に供給された血液製剤ではHC`抗体検査がなされていなかったことなどにより, 日本全国で100万人を越える人が輸血によりHCVに感染した可能性がある. 自覚症状に乏しいため, 感染に気づかぬまま, 高率に慢性化し, 20年で肝硬変, 30年で肝細胞癌が発生すると考えられ, 深刻な問題となっている. 【目的】開院(1979年10月)から1989年11月までの期間に当病院で輸血を受けた患者に連絡を行い, 検査を受けてもらうことに...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 52; no. 1; p. 67
Main Authors 多葉田祥代, 道野淳子, 西野主眞, 宮林千鶴子, 安村敏, 北島勲, 樋口清博
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2006
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Summary:【背景】輸血などの医療行為に伴ってC型肝炎ウイルス(HCV)に感染しているにもかかわらず, この事実を知らずにいる人の多いことが社会問題となりつつある. 1989年11月以前に供給された血液製剤ではHC`抗体検査がなされていなかったことなどにより, 日本全国で100万人を越える人が輸血によりHCVに感染した可能性がある. 自覚症状に乏しいため, 感染に気づかぬまま, 高率に慢性化し, 20年で肝硬変, 30年で肝細胞癌が発生すると考えられ, 深刻な問題となっている. 【目的】開院(1979年10月)から1989年11月までの期間に当病院で輸血を受けた患者に連絡を行い, 検査を受けてもらうことにより, 病院が地域社会における責任を果たすことを目的とした. 【方法】開院(1979年10月)以降, 1989年11月までの期間に輸血を受けた患者の調査を行った. この期間の輸血記録が存在していないため, 手術症例に関しては麻酔記録から拾い出し, 輸血の既往のある患者も拾い出した. この作業を輸血, 細胞治療部スタッフで行い, 作成したリストを診療科でさらに確認と手術以外の輸血症例の拾い出しを依頼した. リストに基づき手紙を出し, 病院への受診を呼びかけた. 受診患者にHCV抗体検査を行い検査結果は郵送にて報告し, 陽性者に精査のため受診されることを勧めた. 【成績】手術時に輸血を受けた患者数は, 2,522名(手術時年齢0歳~96歳平均57.1歳)であり, また輸血の既往のある患者数は861名であった. 診療科で補足最終リストでは3,261名となり, このうち住所不明を除いた3,231名にHCV抗体検査のための受診を呼びかける手紙を, 2001年9月に郵送したが, 438通が住所不明で連絡できなかった. 平成17年9月30日現在, 当病院での受診者は, 444名(15.9%)であり, 陽性者は55名(12.4%)であった. そのうち, 27名が当院の肝臓内科を受診後, 17名が現在当院に治療のため通院している. 【結論】HCV抗体検査が行われる以前に輸血を受けた患者は高率にHCV陽性であり, 組織的な掘り起しが必要である.
ISSN:0546-1448