2 輸血前後の検体保管-オーダーリング実施に向けての取り組み

血液製剤等に係わる遡及調査ガイドラインにより医療機関では血液製剤の適正使用と, 血液製剤の安全性に関する情報の収集及び提供, 製剤使用記録の20年保管, 輸血用製剤については輸血前後の感染症検査の実施および検体保管が求められている. 当院では, 主に溶血性輸血副作用時の再検査のために患者クロス用検体の保管を行ってきた. その間, 輸血による感染症が疑われた患者の調査用に提供してきたが, 特に自動検査機器を使用している現状ではPCRレベルに耐えうる検体ではない. そこで, 平成17年3月にガイドラインが通達されたことから新しい検体保管システムを構築すべく検討を行った. 検体保管システムの概要は,...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 51; no. 4; p. 397
Main Author 万木紀美子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2005
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Summary:血液製剤等に係わる遡及調査ガイドラインにより医療機関では血液製剤の適正使用と, 血液製剤の安全性に関する情報の収集及び提供, 製剤使用記録の20年保管, 輸血用製剤については輸血前後の感染症検査の実施および検体保管が求められている. 当院では, 主に溶血性輸血副作用時の再検査のために患者クロス用検体の保管を行ってきた. その間, 輸血による感染症が疑われた患者の調査用に提供してきたが, 特に自動検査機器を使用している現状ではPCRレベルに耐えうる検体ではない. そこで, 平成17年3月にガイドラインが通達されたことから新しい検体保管システムを構築すべく検討を行った. 検体保管システムの概要は, 平成12年よりすでに輸血検査および血液製剤のオーダーリングを行っていることから, 輸血検査項目の一つとして検体保管をオーダーリングに組み入れた. 血液型, 不規則抗体検査などの輸血検査とは別に検体保管専用の採血ラベルを発行して分離剤入りの採血管に採取する. 次に, 検体が輸血部に搬送された時点で到着確認を行いホスト側には受け取り日を返信する. 検体を使用する頻度は, かなり低いと考えられるため個々に登録番号を設けず月単位で保管することとした. 検体は遠心分離後そのまま凍結保存を行う. なお, 保管用冷凍庫は保冷庫温度集中監視システムに組み入れ温度監視を行っている. 輸血検査用検体の一部を分離し保管することも考えたが, 手作業で行うにはかなりの手間と検体取違いなどが発生する危険性があること, 検体分注を機械化する程の検体数はなくコストが高いこと, 輸血検査の実施が遅れることなどから前者を選択した. 臨床側から検体保管のオーダーが適切になされることが重要となるが, その対応策として輸血用製剤のオーダーに付随して行う検体保管オーダーと, 検体検査オーダーとして単独で行う2方法を設定した. また, 輸血用製剤のオーダーに対し輸血歴の有無により検体保管オーダーの有効期限を設定して検体保管オーダーもれがないよう警告を発生させる等の機能を設けた. 生物由来製品感染等被害救済制度の適応を受けるためには輸血前検体での検査結果が重要となる. そのための医療機関側の対応としてインテリジェントな輸血前後検体保管システムの構築は必須である. しかし, その労力とコストは感染症の発生予防に直接つながるものではなく, 輸血用製剤の病原因子不活化技術が早急に確立され実用化されることを切に願う.
ISSN:0546-1448