P121 免疫性溶血性貧血で輸血が必要になった一症例

【はじめに】自己免疫性溶血性貧血(以下AIHA)患者への治療は, 原則的には輸血療法は行わず, ステロイドによる治療が優先される. 今回我々は, AIHA患者で心不全を呈した高度の貧血状態で緊急的な輸血療法を余儀なくされるも, 輸血に伴う副作用を回避できた症例を経験したので報告する. 【症例】76歳, 男性. 輸血歴なし. 平成14年11月頃より労作時息ぎれで, 12月11日当院外来受診. 間質性肺炎像, 網状赤血球の増加を伴った高度貧血あり, 溶血性貧血の疑いで入院. 【検査成績】RBCl58万/μl, Hb62g/dl, Ret21.1%, 生化学検査では著変なし. 血液型0型, Rh(+...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 50; no. 2; p. 329
Main Authors 小原英夫, 高橋徹, 斉藤公基, 田畑雅央, 村岡睦元, 二部琴美
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2004
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Summary:【はじめに】自己免疫性溶血性貧血(以下AIHA)患者への治療は, 原則的には輸血療法は行わず, ステロイドによる治療が優先される. 今回我々は, AIHA患者で心不全を呈した高度の貧血状態で緊急的な輸血療法を余儀なくされるも, 輸血に伴う副作用を回避できた症例を経験したので報告する. 【症例】76歳, 男性. 輸血歴なし. 平成14年11月頃より労作時息ぎれで, 12月11日当院外来受診. 間質性肺炎像, 網状赤血球の増加を伴った高度貧血あり, 溶血性貧血の疑いで入院. 【検査成績】RBCl58万/μl, Hb62g/dl, Ret21.1%, 生化学検査では著変なし. 血液型0型, Rh(+), クームス(直接, 間接)テスト強陽性, 不規則抗体陽性. 抗C+e+Dia+dl様抗体, DT解離試験で被検細胞すべて強陽性, 血清中に抗C+e+Dia+dl様抗体の可能性. 【入院後の経過】AIHAの診断下, 入院後第2日目よりプレドニン40mg/dl内服開始後, 徐々に貧血と胸部陰影の改善あり. しかし第17日目突然の発熱と貧血の増悪, 心拡大, 心タンポナーデの所見. 第25日目にHb値5.0g/dlまで低下し, 心不全徴候の悪化あり, 慎重に対応抗原陰性血の輸血(800ml)を施行するも輸血による副作用は認めず. 輸血後徐々に心嚢液消失, 心不全や間質性肺炎像の著明改善, 第100日目に退院. 【考察とまとめ】AIHA患者の交差適合試験の副試験では必ず陽性となり, 主試験も陽性を示す場合もあり, 輸血検査で適合血を得ることは困難. 今回, 我々は貧血の増悪に伴う心不全を呈したAIHA症例に直接, 間接クームステスト陽性ながら, 対応抗原陰性血を緊急的に輸血するも, 副作用は認められず. 本例では血液センターと連携し, 不規則抗体解析の迅速化, 可能レベルで対応抗原陰性血を選び, 臨床側との協力で, ステロイド投与下, 必要最小限の輸血に留めたことが, 輸血副作用防止に有用であったと考えられる.
ISSN:0546-1448