1.温式自己抗体同定検査における酸解離液の有効利用
温式自己抗体(以下, 自己抗体)保有患者に輸血用血液を選択する場合, 自己抗体にマスクされた同種抗体の検出と, 自己抗体の特異性を同定することが重要となる. 同種抗体の検出については, 酸解離-PEG吸収法の有用性を昨年の本学会で報告したが, 自己抗体の同定については, 通常, 新たな患者血球を用いた解離試験が必要となり, 再採血で患者に負担をかける場合も少なくない. そこで今回我々は, 検査手順と検体量の削減を目的として, 酸解離-PEG吸収法の過程で得られる酸解離液を用いた自己抗体の同定について, 従来法との比較検討を行ったので報告する. 【方法および成績】酸解離液のpHが7.3前後になる...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 50; no. 1; pp. 136 - 137 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
2004
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Online Access | Get full text |
ISSN | 0546-1448 |
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Summary: | 温式自己抗体(以下, 自己抗体)保有患者に輸血用血液を選択する場合, 自己抗体にマスクされた同種抗体の検出と, 自己抗体の特異性を同定することが重要となる. 同種抗体の検出については, 酸解離-PEG吸収法の有用性を昨年の本学会で報告したが, 自己抗体の同定については, 通常, 新たな患者血球を用いた解離試験が必要となり, 再採血で患者に負担をかける場合も少なくない. そこで今回我々は, 検査手順と検体量の削減を目的として, 酸解離-PEG吸収法の過程で得られる酸解離液を用いた自己抗体の同定について, 従来法との比較検討を行ったので報告する. 【方法および成績】酸解離液のpHが7.3前後になるように, 被検血球沈査1容+0.1Mグリシン塩酸/10%EDTA(4:1)2容+1Mトリス緩衝液0.3容で行った. 従来法としては, 一般に広く普及しているDT解離法(オーソDT解離液II)を用い, 操作は使用説明書に従った. なお, 酸解離液とDT解離液との希釈倍率を同一にするため, 抗体の検出には2倍量の酸解離液(200μL)を使用した. 酸解離液が不規則抗体検査用血球に与える影響を試験管法およびFCM法で確認したところ, 主な血液型の抗原性は保たれていた. また, 抗D抗体を用いた解離効率の比較では, DT解離法と同等の性能が得られた. 更に, 22例の自己抗体保有患者血球を用いたDT解離法との並行試験では, 血液型特異性を持たない自己抗体が17例と, 血液型特異性を持つ自己抗体5例(抗C+e抗体2例, 抗E抗体2例, 抗E+c抗体1例)が検出され, いずれも一致した結果であった. 【まとめ】酸解離液は, DT解離液と同様に自己抗体の同定に使用することができるため, 酸解離-PEG吸収法の過程で得られる酸解離液を用いることにより, 自己抗体検査の手順と検体量の削減が可能であった. |
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ISSN: | 0546-1448 |