27.生体肝移植術におけるMSBOSの検討

【目的】当院では1999年より生体肝移植を行っている. 手術時には大量輸血を想定して血液製剤が準備されているが, C/T比が大きい症例も少なく無い. 今回, 出血量, 血液製剤使用量等について検討を行い, MSBOSの設定を試みたので報告する. 【対象, 結果】生体肝移植は32例に実施されており, その内訳は, 肝硬変:10例, 家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP):6例, 胆道閉鎖症:9例, 劇症肝炎:4例, 自己免疫性肝炎:2例, 高シュウ酸尿症:1例であった. 血液製剤使用量は術日当日にのみ輸血した量とした. 原因疾患別の出血量の循環血液量との比(出血量比)は, 肝硬変(37%-...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 50; no. 1; p. 117
Main Authors 原田美保, 福吉葉子, 中満三容子, 坂本福美, 米村雄士, 山口一成, 岡部紘明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2004
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ISSN0546-1448

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Summary:【目的】当院では1999年より生体肝移植を行っている. 手術時には大量輸血を想定して血液製剤が準備されているが, C/T比が大きい症例も少なく無い. 今回, 出血量, 血液製剤使用量等について検討を行い, MSBOSの設定を試みたので報告する. 【対象, 結果】生体肝移植は32例に実施されており, その内訳は, 肝硬変:10例, 家族性アミロイドポリニューロパチー(FAP):6例, 胆道閉鎖症:9例, 劇症肝炎:4例, 自己免疫性肝炎:2例, 高シュウ酸尿症:1例であった. 血液製剤使用量は術日当日にのみ輸血した量とした. 原因疾患別の出血量の循環血液量との比(出血量比)は, 肝硬変(37%-421%), 胆道閉鎖症(9%-341%), FAP(8%-71%), 劇症肝炎(27%-45%), 自己免疫性肝炎(27%-316%), 高シュウ酸尿症(40%)であり, 肝硬変, 胆道閉鎖症において大量出血症例がみられた. 年齢においては, 成人(8%-421%)小児(9%-341%)と有意差は認めなかった. また, 術前の血小板数, AT-III, PT, APTTの値で比較すると, 異常値を示した症例で出血量比が大きい傾向にあったが, 有意差は認めなかった. 【結語】生体肝移植術時の出血量, 血液製剤使用量について, 疾患別, 年齢, 術前の検査値で比較検討を行ったが有意差は認めず, これらをもとにMSBOSの設定をすることは困難であると思われた. C/T比を下げる為には手術前準備血を必要最少限にし, 大量出血症例に対しても速やかに対応できるよう術前, 術中に臨床側, 手術室, 血液センターと連絡体制を整えなければならない.
ISSN:0546-1448