P202造血幹細胞移植時のドナー/レシピエント間マイクロサテライトDNAキメリズム解析の意義と現段階での問題点

我々の施設では昨年から造血幹細胞移植時のドナー/レシピエント間マイクロサテライトDNAキメリズム解析(以下キメリズム解析)を開始した. 現在までに急性骨髄性白血病4例, 悪性リンパ腫1例, 再生不良性貧血1例にのべ13回解析を試行した. 移植はHLA一致血縁者間骨髄移植が4例, 1座ミスマッチの血縁者間末梢血幹細胞移植と非血縁臍帯血移植各1例である. 解析方法はマイクロサテライトD6S89, INT2, HGH, APOA11, ACTBP-2の5種類の特異的プライマーをPCR増幅後, ABIPRISM310Genetic Analyzerを用い, GeneScan Analysisソフトによ...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 49; no. 2; p. 335
Main Authors 柳沢雅美, 大久保光夫, 阿南昌弘, 大木浩子, 今井厚子, 渡辺敬依子, 久保居由紀子, 手塚芳江, 島田崇史, 平田蘭子, 前田平生
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2003
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ISSN0546-1448

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Summary:我々の施設では昨年から造血幹細胞移植時のドナー/レシピエント間マイクロサテライトDNAキメリズム解析(以下キメリズム解析)を開始した. 現在までに急性骨髄性白血病4例, 悪性リンパ腫1例, 再生不良性貧血1例にのべ13回解析を試行した. 移植はHLA一致血縁者間骨髄移植が4例, 1座ミスマッチの血縁者間末梢血幹細胞移植と非血縁臍帯血移植各1例である. 解析方法はマイクロサテライトD6S89, INT2, HGH, APOA11, ACTBP-2の5種類の特異的プライマーをPCR増幅後, ABIPRISM310Genetic Analyzerを用い, GeneScan AnalysisソフトによりDNAのアリルサイズの推定と定量をい, レシピエントとドナーの違いのある増幅産物量を穎粒球由来のDNAとリンパ球由来のDNAに関して解析した. 現在我々の施設で行っている造血幹細胞移植療法は造血器腫瘍に対する標準的な治療法であるため, 移植後30~70日の時点の解析では骨髄血球由来のDNAは全例ドナー型に置き換わっていた. 1例のみ移植後14日で解析を試みたが, この場合ドナー対レシピエントの比は15:1であった. 最長で200日後の検体で解析しているがすべてドナー型であった. キメリズム解析はドナー型DNAの存在とレシピエント型のDNAの消失を明快に判定でき, この点では生着の可否を裏付ける情報を提供する事ができる. しかし, 血球のみを対象としているため, 皮膚, 肝臓, 腸管粘膜などで起こっているGVH反応は評価する事が出来ない. また, 費用の面から頻回に解析することは困難なため, 結果として完全にドナータイプに置き換わった状態を(後追いして)解析していることになる. CMLのドナーリンパ球輸注や通常の同種骨髄移植の適応のない症例のミニ移植でキメリズムを成立させる治療法以外では, 検査として不可欠なものとは言えず, 今後有用性を明らかにする研究と症例の集積に努めなければならない.
ISSN:0546-1448