P-012 遺伝子検査によりABO型を確定した自己免疫性溶血性貧血の一例

(目的)ABO血液型表裏不一致により遺伝子検査を実施した一症例を報告する. (症例)《生後0日》他院にて36W(1396g)で出産. 口唇裂, ファロー四徴症で当院のNICUへ入院. ABO型表試験のみで0型と判定. 《生後7ヶ月》口唇裂の手術のため形成外科に入院. ABO型で表0型, 裏B型(A血球=2+, B血球=0)と表裏不一致となる. 父親, 母親共にB型のため, B型の亜型も考えB Transferase活性を検査したが陰性のためO型と報告. 輸血申込(含T&S)はなかった. 《生後9ヶ月》顔色不良で活気がないため小児科を受診. 貧血による多呼吸, 呼吸困難のため入院. 検査...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 48; no. 2; p. 161
Main Authors 高橋博之, 鈴木明, 工藤善範, 成田香魚子, 伊藤経夫, 佐藤裕子, 三浦淳子, 峯岸正好, 土屋滋, 今泉益栄
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2002
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Summary:(目的)ABO血液型表裏不一致により遺伝子検査を実施した一症例を報告する. (症例)《生後0日》他院にて36W(1396g)で出産. 口唇裂, ファロー四徴症で当院のNICUへ入院. ABO型表試験のみで0型と判定. 《生後7ヶ月》口唇裂の手術のため形成外科に入院. ABO型で表0型, 裏B型(A血球=2+, B血球=0)と表裏不一致となる. 父親, 母親共にB型のため, B型の亜型も考えB Transferase活性を検査したが陰性のためO型と報告. 輸血申込(含T&S)はなかった. 《生後9ヶ月》顔色不良で活気がないため小児科を受診. 貧血による多呼吸, 呼吸困難のため入院. 検査結果はRBC110万, Hb4.9, T-Bil4.2, LDH2088であった. 輸血のため, 血液型, 抗体検査を実施したが, ABO型は生後6ヶ月時と同様に表O型, 裏B型と表裏不一致, Rho(D)陽性, 直接抗グロブリン試験陽性(抗IgGとのみ反応し, 抗体解離液同定は型特異性のないPanreactive), 間接抗グロブリン試験陽性(同定は型特異性のないPanreactive)であった. 血液型確定困難とみなし, O型MAPを1単位輸血したが, 副作用はなかった. 《生後12ヵ月》Hb4.6となり, O型MAPを1単位輸血. 以後2ヶ月間に7回7単位を輸血する. この間もABO型は表O型, 裏B型で表裏不一致, 直接, 間接抗グロブリン試験は陽性であった. 《生後15ヶ月》患児の状態が良好とのことで, 血液型を確定するため, ABO型の遺伝子検査を行った. RFLP法を用い, BstPI, KpnI, BssHII, BanI, AluI, HapIIの制限酵素で処理した結果, 父親BO型, 母親BO型, 患児OO型と遺伝子型が判定された. 《生後24ヶ月》直接, 間接抗グロブリン試験は陽性であったが, 裏試験で抗Bが検出され表裏が一致した. 現在は外来で経過観察中である. (まとめ)B Transferaseは陰性であったが, 抗B産生まで約2年を要し, 途中遺伝子検査でABO血液型を確定した自己免疫性溶血性貧血の症例を報告した. 検体採取に困難がある乳幼児や免疫異常を有する患者ではABO血液型を確定するために遺伝子検査を導入しなければならないケースもあると考える.
ISSN:0546-1448