O-038 HLA適合移植例におけるマイナー組織適合抗原不一致の重要性

マイナー組織適合抗原(以下mHaと略す)は主要組織適合抗原であるHLA以外の組織適合抗原である. 造血細胞上に発現されるmHaの多型性抗原は抗白血病効果(以下GVL効果)の標的抗原になりうると注目されている. われわれはHLA適合の造血細胞移植症例を対象にmHaの多型性の不一致と再発の有無について検討したので報告する. 対象:当院でHLA適合ドナーから造血細胞移植を受けた症例で, 40例は10種類のmHaを, 62症例は4種類のH-Yの多型性を検討した. 方法:検査可能な6種類のmHaは患者の爪と末梢血からDNAを採取し, 佐治, 丸屋らの方法を用いてPCR-RFLP法で検査し, 4種類のY染...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 48; no. 2; p. 145
Main Authors 塩原信太郎, 安江静香, 佐藤英洋, 近藤静佳, 加藤留美, 中条達也, 高見昭良, 中尾眞二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 2002
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Summary:マイナー組織適合抗原(以下mHaと略す)は主要組織適合抗原であるHLA以外の組織適合抗原である. 造血細胞上に発現されるmHaの多型性抗原は抗白血病効果(以下GVL効果)の標的抗原になりうると注目されている. われわれはHLA適合の造血細胞移植症例を対象にmHaの多型性の不一致と再発の有無について検討したので報告する. 対象:当院でHLA適合ドナーから造血細胞移植を受けた症例で, 40例は10種類のmHaを, 62症例は4種類のH-Yの多型性を検討した. 方法:検査可能な6種類のmHaは患者の爪と末梢血からDNAを採取し, 佐治, 丸屋らの方法を用いてPCR-RFLP法で検査し, 4種類のY染色体特異抗原(H-Y)抗原は性別とHLAからアリルを決定した. ドナーとホストの検討からmHaのGVHD方向の多型性の不一致を決定した. GVHDと再発の有無はカルテを調査して得た. 結果:1)mHaの多型性の不一致頻度は42%で, 内訳はH-Y:21%, CD62L:13%, HA-1:6%, CD3:12%, CD49b:0%であった. 2)10種類のmHaを検討した40症例中, 不一致15例のGVHDは66%, 再発率は13%であったが, 一致の25例のGVHDは40%, 再発率は40%であった. 3)血縁者間移植29例中不一致10例のGVHDは50%, 再発率は10%, 一方一致19例のGVHDは36%, 再発率は47%であった. 以上よりHLA適合の血縁者間移植例ではmHaの多型性の不一致例は有意に再発率が低かった. 考察:mHaの多型性の不一致はGVHD発症よりもGVL効果発現と関係があり, 不一致がありかつGVHDの合併例で最も強いGVL効果が期待できる. 検討出来るmHaの種類はまだ少ないが, 移植後症例の再発の予測や複数いるドナーの選択に有用な検査と考えられる. 造血細胞上のmHaが同定出来ればGVHDを回避しGVL効果の得られるドナーを選定出来る可能性がある.
ISSN:0546-1448