好中球抗原抗体に関する研究XIX

母親がNA-Nullであり, その血清中の高力価のFcγR IIIに対する抗体よると思われるNAINPの一例を報告する. 【症例】 6ヶ月. 女児. 第2子. 母親が妊娠中毒症(36週)にて入院. 緊急帝王切開にて7月18日出生. Apger 7点. 日齢1日より膿痂疹あり. 好中球減少のため精査となった. 【検査】 1. MoAbによる表面抗原の解析とDNAタイピング 2. 患者血清の解析 *GIIFT(Granulocyte Indirect Immunofluorescence Test)においてbroadな反応性を示した. 抗体価は日齢30日に5倍で3ヵ月後に陰性化した. 3. 母親血...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 45; no. 2; p. 177
Main Authors 平岡朝子, 谷廣ミサエ, 谷口菊代, 藤井輝久, 高田昇, 木村昭郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1999
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Summary:母親がNA-Nullであり, その血清中の高力価のFcγR IIIに対する抗体よると思われるNAINPの一例を報告する. 【症例】 6ヶ月. 女児. 第2子. 母親が妊娠中毒症(36週)にて入院. 緊急帝王切開にて7月18日出生. Apger 7点. 日齢1日より膿痂疹あり. 好中球減少のため精査となった. 【検査】 1. MoAbによる表面抗原の解析とDNAタイピング 2. 患者血清の解析 *GIIFT(Granulocyte Indirect Immunofluorescence Test)においてbroadな反応性を示した. 抗体価は日齢30日に5倍で3ヵ月後に陰性化した. 3. 母親血清の解析 *GIIFTでbroadな反応性を示した. 抗体価は7月26日に640倍, 3ヵ月後には200倍に低下した. *ITMA(Inhibition test with MoAb)を行い, NA1/NA2/NB1好中球との反応で, FcγR IIIに対するMoAbであるTAG3, 3G8で抑制がみられた. NA1特典MoAb(TA1, MG38), NA2特異MoAb(TAG2, GRM1), NB1特異MoAb(TAG4)では抑制されなかった. *MAIGA(MoAb immobilization of granulocyte antigens)においても同様にTAG3, 3G8でcaptureされた抗原と反応した. 【結果】血清学的タイピング, DNAタイピングによって母親の好中球はFcγRIIIB欠損であるNA-Nullであることが示された. 母親血清中には, 高力価の好中球抗体があり, ITMA, MAIGAともにFcγRIII特異性を示唆した. よって母親由来の抗FcγRIIIb抗体によるNAINPと考えられた.
ISSN:0546-1448