献血者から検出された抗St^a +Wr^a+αの1 例

目的:MN式関連抗原St^a (Stones)抗原は, 1962年Clegnorn らによって初めて報告され, 日本人では約5%が陽性で, 白人, 黒人では低頻度であるとされている. また, Wr^a (Wright)抗原は, 1953年Holmanによって発見された低頻度抗原で, 日本人には発見されていない. 今回, 献血者の不規則抗体スクリーニングにおいて, 低頻度抗原に対する抗体, 抗St^a +Wr^a +αを検出したので報告する. 方法:抗体スクリーニングの方法として, 生食法, ブロメリン法は自動検査機器を用いて, 間接クームス法は5本プールした血漿をPEG-AHG法(ポリエチレン...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 44; no. 1; p. 60
Main Authors 伊藤寿美恵, 嶋多美子, 新田誠, 荒木浩美, 上田知美, 円満字豊, 金光公浩, 大川力, 村瀬隆治, 中出亮
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1998
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Summary:目的:MN式関連抗原St^a (Stones)抗原は, 1962年Clegnorn らによって初めて報告され, 日本人では約5%が陽性で, 白人, 黒人では低頻度であるとされている. また, Wr^a (Wright)抗原は, 1953年Holmanによって発見された低頻度抗原で, 日本人には発見されていない. 今回, 献血者の不規則抗体スクリーニングにおいて, 低頻度抗原に対する抗体, 抗St^a +Wr^a +αを検出したので報告する. 方法:抗体スクリーニングの方法として, 生食法, ブロメリン法は自動検査機器を用いて, 間接クームス法は5本プールした血漿をPEG-AHG法(ポリエチレングリコールー抗グロブリン法)で行った. 今回, 抗体スクリーニングの生食法とブロメリン法で陰性, PEG-AHG法で陽性になったが, 市販の抗体スクリーニング血球及び抗体同定用パネル血球ではすべての方法で陰性になったため精査を行った. 結果及び考察:抗体スクリーニング血球は2種類の赤血球を混合したものを用い, 献血者の血清はその内1本の血球でPEG-AHG法で陽性になった. 各種血球との反応は, St(a+)の血球とは1+の凝集, Bg(a+)の血球とはW+の凝集が認められた. 血小板で吸収後もBg(a+)の血球を含め凝集の強さに変化はなかった. また, 低頻度抗原陽性血球との反応は数種のSt(a+)及びWr(a+)の血球と凝集が認められ, 血清中の抗体は抗St^a +Wr^a +αと同定できた. αについては, 抗体特異性が決定できなかった. また, 抗体スクリーニング血球にはSt^a 抗原が認められた. 献血者は55歳の女性で, 妊娠歴はあるが出産歴はない. また, 50歳の時に子宮と卵巣の全摘を行っているが輸血歴はなく, 過去3回の献血では不規則抗体は陰性だった. また, 梅毒検査でRPR法がW+の陽性, TPHA法が未感作血球と反応するという興味深い結果であったが, 今回同定された抗体との関係は不明である.
ISSN:0546-1448