凝集計を用いたストップ・アンド・フロー法による血小板形態の定量法

血小板は生体内においては薄い円盤状をしており, 通常はこの状態で血液中を循環している. しかし, 血小板は環境の変化に対して極めて鋭敏な細胞であり, 異物面との接触, 機械的ストレス, 低温, EDTAのような抗凝固剤, ADPやトロンビンなどのアゴニスト(凝集惹起剤)により円盤状(ディスコイド型)から球状(スフィヤ型)に変化する. この形態変化を定量することは, 臨床上あるいは輸血用血小板の保存条件の評価において重要である. 現在のところ, 血小板の形態を定量する満足すべき方法はない. 従来から行われている光学顕微鏡や電子顕微鏡による形態観察は判定が難しく, 主観的な要素が入りやすい欠点があ...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 43; no. 3; pp. 350 - 355
Main Authors 大軒子郎, 柴田弘俊
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1997
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Summary:血小板は生体内においては薄い円盤状をしており, 通常はこの状態で血液中を循環している. しかし, 血小板は環境の変化に対して極めて鋭敏な細胞であり, 異物面との接触, 機械的ストレス, 低温, EDTAのような抗凝固剤, ADPやトロンビンなどのアゴニスト(凝集惹起剤)により円盤状(ディスコイド型)から球状(スフィヤ型)に変化する. この形態変化を定量することは, 臨床上あるいは輸血用血小板の保存条件の評価において重要である. 現在のところ, 血小板の形態を定量する満足すべき方法はない. 従来から行われている光学顕微鏡や電子顕微鏡による形態観察は判定が難しく, 主観的な要素が入りやすい欠点があった. また, 形態の定量化には従来からKunickiらのスコアリング法1)が用いられているが, 形態をどの程度反映しているかについては問題がある. 円盤状と球状の細胞の光学的性質は静止時と流動下では差がある2). 即ち, ディスコイド型血小板は流動下で透過率が静止時より増加するが, スフィヤ型血小板は変化しない. この性質を利用した血小板形態の定量については, 既にいくつかの報告3)~6)があるが, 本邦ではまだ応用された例がない. 我々は通常の血小板凝集計を用いて, その方法の最適条件と実用性について検討し, 簡単で客観的な血小板形態の定量法を確立したので報告する.
ISSN:0546-1448