妊婦のルイス式血液型判定への遺伝子診断の応用

[目的]ルイス式血液型を正確に判定する優れた抗体を作製することは, 難しいことが知られている. 大手の臨床検査会社においても, その判定結果の曖昧さから, ルイス式血液型判定を検査項目からはずしているところも少なくない. 我々の研究室では, le1, le2遺伝子の点突然変異を, 容易に検出するためのPCR-RFLP法を開発した. この方法により, 80人以上の健常人のランダムサンプリングを行った結果, すべての人の対立遺伝子はLe, le1, le2のいずれかに分類でき, その遺伝子型は, 赤血球のルイス抗原の陽性か陰性かの表現型と完全に一致したこと, Le, le1, le2遺伝子の日本人...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 40; no. 6; p. 1003
Main Authors 岩崎裕子, 西原祥子, 矢澤伸, 安藤崇男, 成松久
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1994
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Summary:[目的]ルイス式血液型を正確に判定する優れた抗体を作製することは, 難しいことが知られている. 大手の臨床検査会社においても, その判定結果の曖昧さから, ルイス式血液型判定を検査項目からはずしているところも少なくない. 我々の研究室では, le1, le2遺伝子の点突然変異を, 容易に検出するためのPCR-RFLP法を開発した. この方法により, 80人以上の健常人のランダムサンプリングを行った結果, すべての人の対立遺伝子はLe, le1, le2のいずれかに分類でき, その遺伝子型は, 赤血球のルイス抗原の陽性か陰性かの表現型と完全に一致したこと, Le, le1, le2遺伝子の日本人における頻度は, それぞれ66%, 30%, 4%でり, これは, Le(a-, b-)の頻度が10%であることと合致すること, などを報告してきた. 妊娠や癌などの疾病において, ルイス式血液型の表現型が変化することが報告されている. そこで, このPCR-RFLP法によるルイス式血液型決定法の有効性を確かめるためと, 赤血球の表現型の陽性から陰性への変化が, 妊娠週令のどの時期に, どのような原因によりおこるかを解析する目的で以下のような研究を行った. 〔結果と考察]約50例の, 様々の妊娠週令の妊婦の末梢血より, 赤血球, 白血球, 血漿を分離した. 赤血球の表現型は, 各社由来の抗体を用いて決定し右白血球よりゲノムDNAを抽出して, Le遺伝子の遺伝子型を決定し, Le, le1, le2に分類した. 血漿中のβlipoprotein量を測定した. 結果, 赤血球の表現型判定では, false-negativeのミスタイピングがかなりの確率でおこることがわかり, 妊婦のルイス式血液型の正確な診断には, 簡便に行えるPCR-RFLP法による遺伝子診断が推奨される. Le(a+, b-)とLe(a-, b+)の鑑別のために, 現在, 我々はSe遺伝子のクローニングとその変異検出法を開発中である.
ISSN:0546-1448