移植後GVHDとその周辺
同種骨髄移植後には, 移植片対宿主病(GVHD)が認められ, 致死的転帰をとることも稀ではない. その発症率は各施設により異なるが, 移植後100日以内に起る急性GVHDは, grad II~IVに限ると日本では約5~20%とされているが欧米では, 35~45%と高率に認められている. 一方, 移植後100日以後に起る慢性GVHDの日本における発症率は約40%で欧米のそれは25~40%と大差ない. 急性GVHDは, 移入されたT細胞やNK細胞がhostの臓器や組織を認識して惹起される免疫反応に基づくものと考えられていたが, 最近では, サイトカインの関与からGVHDを見直すこともなされ, IL...
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Published in | 日本輸血学会雑誌 Vol. 39; no. 4; p. 4 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本輸血学会
1993
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Summary: | 同種骨髄移植後には, 移植片対宿主病(GVHD)が認められ, 致死的転帰をとることも稀ではない. その発症率は各施設により異なるが, 移植後100日以内に起る急性GVHDは, grad II~IVに限ると日本では約5~20%とされているが欧米では, 35~45%と高率に認められている. 一方, 移植後100日以後に起る慢性GVHDの日本における発症率は約40%で欧米のそれは25~40%と大差ない. 急性GVHDは, 移入されたT細胞やNK細胞がhostの臓器や組織を認識して惹起される免疫反応に基づくものと考えられていたが, 最近では, サイトカインの関与からGVHDを見直すこともなされ, IL-LTNFα, IFNγ, IL-6がヒトの急性GVHDと密接に関係しているとされている. マウスにおいては, この他に, IL-2, IL-3, IL-4, 1FNα, IFNβの関連性も示唆されている. 慢性GVHDは, 多彩な臨床症状を伴うことより, 急性GVHDとは別の機序が考えられている. その特徴は免疫不全と自己免疫様病変にある. この場合にも, サイトカインの関与が示唆されており, IL-1, IL-2, IFNγ, TNFα, IL-6が重要な役割を果たすとされている. 関与するサイトカインは急性GVHDと殆ど同一であり, これのみで, 両GVHDの病態の差を説明しきることは困難である. 今後は, T細胞レセプターの抗原特異性, CD3, CD4, CD8や接着分子の発現, 細胞内シグナル伝達機構などの側面からの解析も必要とされている. また, 免疫学的寛容の成立機構とその破綻における胸腺および末梢の役割についてもさらに詳細な解析が要求されている. 現在, GVHDの予防および治療には, cyclosporin A, methotrexate, 副腎皮質ホルモンの他に, FK506, 15-deoxyspergualinなどの薬剤が用いられているが, まだ十分なものとはいい難い. GVFDの制御には, GVHDの病態解析は勿論のこと, 免疫抑制剤の機序解析も重要である. |
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ISSN: | 0546-1448 |