プロテインAによる顆粒球の化学発光を用いた顆粒球抗体検出法

目的:白血球抗体による輸血副作用は, 抗体によって破壊された顆粒球が遊離するPyrogenによるものが大部分である. 今回我々は顆粒球抗体検出の方法として, 白血球抗体で感作した顆粒球にProtein Aをもつ黄色ブドウ球菌Cowan1菌体を吸着させることで誘起される顆粒球の化学発光を測定した結果, 抗体の有無が判定可能になったので報告する. 材料:白血球は健常人3~5名から採取された顆粒球を混合して細胞数3×10^7 /mlとし, 菌は黄色ブドウ球菌Cowan1親株を菌数4×10^8 /mlとして用いた. 被検血清はI群として, 輸血歴・妊娠歴のない健常人を, II群は, 頻回輸血で副作用の...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 33; no. 2; p. 158
Main Authors 竹内直子, 山崎順啓, 西原祥子, 益田昭吾
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1987
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Summary:目的:白血球抗体による輸血副作用は, 抗体によって破壊された顆粒球が遊離するPyrogenによるものが大部分である. 今回我々は顆粒球抗体検出の方法として, 白血球抗体で感作した顆粒球にProtein Aをもつ黄色ブドウ球菌Cowan1菌体を吸着させることで誘起される顆粒球の化学発光を測定した結果, 抗体の有無が判定可能になったので報告する. 材料:白血球は健常人3~5名から採取された顆粒球を混合して細胞数3×10^7 /mlとし, 菌は黄色ブドウ球菌Cowan1親株を菌数4×10^8 /mlとして用いた. 被検血清はI群として, 輸血歴・妊娠歴のない健常人を, II群は, 頻回輸血で副作用のあった例, ない例を対象とし, それぞれの血清をFibronectin , Cryoglobulin除去, 補体不活化の前処置をして用いた. 方法:顆粒球100μlに被模血清100μlを室温で10分間作用させ感作顆粒球を作製した. 感作顆粒球100μlに0.2mMルミノール液100μlを加え, これにCowan1菌液100μlを混合して, ラボサイエンス社TD4000型ルミフォトメーターを用い, 37℃で化学発光量を測定した. 結果:I群では化学発光量は1.52から4.90で(平均最高値3.40)ですべて5.00以内に包括された. II群では血小板抗体(+)リンパ球抗体(+)例は5.23~63.40で血小板抗体(-)リンパ球抗体(+)では7.58であった. 血小板抗体(+)リンパ球抗体(+)例でも副作用のある例は27.55~63.4. と高値を示し, ない例では5.23~5.79と低値でI群との差は認められなかった. 考察:現在顆粒球抗体が輸血副作用に関連をもっているとの報告も散見され, 我々が試みた顆粒球化学発光量測定でも, 健常人群は5以下であり, 頻回輸血群では副作用を認めない症例では5~6で健常人との差はなく, 顆粒球抗体は陰性と判定された. 一方副作用の認められた症例では17~63と高い値を示し, 抗体陽性と判定され, 顆粒球抗体は副作用をひきおこす大きな要因の一つであることが示唆された. このことから輸血副作用の原因究明には, リンパ球抗体検出に加えて, 顆粒球抗体の検索が必要であり, その検出法には化学発光測定が有意であると考えられる.
ISSN:0546-1448