ATL非多発地域の頻回輸血者, 透析患者etcにおける抗ATLA抗体の検索

1. 目的 ATLは日本の南西部で多発している疾患で多発地域では健康人にもATLA抗体が多く見い出され, 輸血用血液の抗体スクリーニングが実施されつつある. 非多発地域を対象にhigh riskと考えられる頻回輸血者, 透析患者, 血友病患者と他の疾患などの検体をゼラチン粒子凝集法(gelatin particle agglutination:PA)と酵素免疫法(EIA)で検査し, 間接蛍光抗体法(IF), 免疫沈降法(RIP)で確認し, 非多発地域での抗ATLA抗体の検索を行った. 2. 材料および方法 被検血清は東大病院輸血部, 国立王子病院, 神奈川県立子ども医療センター, 九大病院中検...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 32; no. 2; p. 285
Main Authors 東海林寿子, 吉原なみ子, 新田朝子, 赤塚俊隆, 松橋直
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1986
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Summary:1. 目的 ATLは日本の南西部で多発している疾患で多発地域では健康人にもATLA抗体が多く見い出され, 輸血用血液の抗体スクリーニングが実施されつつある. 非多発地域を対象にhigh riskと考えられる頻回輸血者, 透析患者, 血友病患者と他の疾患などの検体をゼラチン粒子凝集法(gelatin particle agglutination:PA)と酵素免疫法(EIA)で検査し, 間接蛍光抗体法(IF), 免疫沈降法(RIP)で確認し, 非多発地域での抗ATLA抗体の検索を行った. 2. 材料および方法 被検血清は東大病院輸血部, 国立王子病院, 神奈川県立子ども医療センター, 九大病院中検, 東京医科歯科大から供与されたものを用いた. 頻回輸血者111例, 透析患者117例(うち32例は透析前と後のペア血清), 血友病患者131例(1976年からのシリーズ血清で延べ323検体), 妊婦血清218例, 抗ATLA抗体陽性9例, ATLまたはATLL患者5例につき検査した. 検査方法はPAおよびEIAで検査し, どちらか一方でも陽性の検体についてI.F.で確認した. また不一致例の一部につき免疫沈降法を行った. 3. 結果 High risk群と思われる頻回輸血者では関東地力でも約10%陽性であったが, 透析患者では1%と低く, high riskとは思われず, 透析の前と後で抗体価に差はみられなかった. 血友病では130例中3例2.3%が抗体陽性であった. AIDS抗体は1986年の検体は約40%と高陽性であるのに比べて, ATLはVIII因子製剤, 第IX因子製剤からの伝播は考えられなかった. 尚, 抗ATLA抗体とAIDS抗体の両者陽性検体は1例もなく, 交叉性は認められなかった. 妊婦の陽性は1例のみであった. 九大中検から供与された検体およびATL, ATLLの患者検体は全検査法で陽性を示し, その他の検体はPAが64倍以上のものは他の方法でも陽性であった. I.F.が陰性でPA, EIAの一方以上陽性でRIPが陽性の検体があった. 4. 結論 非多発地域の頻回輸血者に約10%ATL抗体が検出されたが, 透析患者, 血友病患者の陽性率は高くなかった.
ISSN:0546-1448