B型肝炎ワクチン使用によるHBV感染防御

HBV感染事故に対するHBIGの使用はB型肝炎感染予防に有効であるが, 感染源がMO法でe抗原陽性血の場合には80%前後にしか感染を防御できない. HBV母児間垂直感染防御にもHBIGの単独使用が主に行なわれてきているが, 1~2年後に20%前後のキャリア化をみるという限界があった. この限界を克服するための方法として早期に血中HBIG濃度を上昇させる事と能動免疫の利用とが考慮されてきた. 私達は, HBV母児間垂直感染防御に受動免疫として, 静注用と筋注用のHBIGを用い, 更にB型肝炎ワクチンを連続使用する方法を12症例に試み, 良好な成績をおさめているので報告した. 対象はMO法でHBe...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 29; no. 6; p. 716
Main Authors 田辺利男, 安井重裕, 川上清泰, 伊藤志保子, 渡辺一彦, 中佐藤利一, 美馬聰昭, 守屋敬純, 安斎哲郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1984
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Summary:HBV感染事故に対するHBIGの使用はB型肝炎感染予防に有効であるが, 感染源がMO法でe抗原陽性血の場合には80%前後にしか感染を防御できない. HBV母児間垂直感染防御にもHBIGの単独使用が主に行なわれてきているが, 1~2年後に20%前後のキャリア化をみるという限界があった. この限界を克服するための方法として早期に血中HBIG濃度を上昇させる事と能動免疫の利用とが考慮されてきた. 私達は, HBV母児間垂直感染防御に受動免疫として, 静注用と筋注用のHBIGを用い, 更にB型肝炎ワクチンを連続使用する方法を12症例に試み, 良好な成績をおさめているので報告した. 対象はMO法でHBe抗原, DNAポリメラーゼ陽性の母から生まれ臍帯血でHBs抗原が陰性(RPHA法)の児である. 生後2時間以内に静注用F(ab)2HBIGを投与し, 24時間後にHBs抗体価がPHA法で4倍以上であることを確認してHBIGを筋注した. その後抗体価を一定に保ちながら, 3ヵ月目からB型肝炎ワクチン(non-adjuvant)を併用した. 現在まで12症例にこの方法を用い, うち7症例は既に1年以上を経過しているが, 全例の感染防御に成功している. B型肝炎ワクチンを4回以上投与した8症例中5例が能動免疫を獲得した. non-adjuvantに反応しない3症例にはadjuvantいりβ型肝炎ワクチン接種により, すべて能動免疫を獲得した. この方法によりHBV母児間垂直感染防御は, より早く, 安全にかつ完壁に行なえるようになった. 又, ボランティアの院内職員を対象にしたnon-adjuvantとadjuvantB型肝炎ワクチンの有効性についても報告した.
ISSN:0546-1448