日本における輸血の現状

ここ数年来の輸血による血清肝炎の激増や売血による供血者貧血の多発は, 血液問題を社会問題化するに至り, 政府も1昨年8月閣議で, “可及的速やかに保存血液を献血により確保する体制を確立する為, 国及び地方公共団体による献血思想の普及と献血の組織化を図るとともに日赤または地方公共団体による献血受け入れ体制の整備を推進する”ことを決定した. 以来1年半の期間を経過し, わが国の血液事情は画期的な変動を示しつつあり, 売血国家として, 悪名をとどろかしていた日本も, ようやく新しく生れかわろうとしている. しかし細かく眺めていくと, 本来急速な根本的な転換をはかるべきものを, 姑息的, 漸進的に実施...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 14; no. 1; pp. 53 - 59
Main Author 村上省三
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1967
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Summary:ここ数年来の輸血による血清肝炎の激増や売血による供血者貧血の多発は, 血液問題を社会問題化するに至り, 政府も1昨年8月閣議で, “可及的速やかに保存血液を献血により確保する体制を確立する為, 国及び地方公共団体による献血思想の普及と献血の組織化を図るとともに日赤または地方公共団体による献血受け入れ体制の整備を推進する”ことを決定した. 以来1年半の期間を経過し, わが国の血液事情は画期的な変動を示しつつあり, 売血国家として, 悪名をとどろかしていた日本も, ようやく新しく生れかわろうとしている. しかし細かく眺めていくと, 本来急速な根本的な転換をはかるべきものを, 姑息的, 漸進的に実施したため, 1部では逆に悪影響すら現われはじめており, 更には閣議決定の趣旨が十分に理解されていないため, 国民あげての運動とはいいがたい現状にあることは誠に残念なことである. 殊にその第1線に立つべき医師の間にも十分な理解が得られていないきらいがあるので, 今日は現状について簡軍に述べ医師の責務について考えてみたいと思う.
ISSN:0546-1448