“代用血充填小型人工心肺の研究(特に血液性状の変化について)”へ補足

現在, 人工心肺回転に際し血液節減, 血清肝炎, 不適合輸血の防止の目的で, 血液希釈体外循環の研究が広く行なわれている. われわれも塩化ビニール製のdisposable bubble oxygenatorを創案して人工心肺回路容積を400-800ccまで減少させ, これに希釈率30cc/kgの割合で代用血として市販の5%G, LMWD, アルギン酸, アミノ酸, PVPの輸液用溶液を充填し, 酸素流量1-2リットル/min, 灌流量30-40cc/kg/min, 27-28℃の低体温を併用し, 灌流時間45-60分間の血液希釈体外循環を行ない実験的に検討した. この場合の血液性状は赤血球数,...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 12; no. 1; p. 135
Main Authors 西村正也, 正木秀人, 大石喜六, 赤尾元一, 高木博巳, 広島辰治郎, 木下柳二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1965
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:現在, 人工心肺回転に際し血液節減, 血清肝炎, 不適合輸血の防止の目的で, 血液希釈体外循環の研究が広く行なわれている. われわれも塩化ビニール製のdisposable bubble oxygenatorを創案して人工心肺回路容積を400-800ccまで減少させ, これに希釈率30cc/kgの割合で代用血として市販の5%G, LMWD, アルギン酸, アミノ酸, PVPの輸液用溶液を充填し, 酸素流量1-2リットル/min, 灌流量30-40cc/kg/min, 27-28℃の低体温を併用し, 灌流時間45-60分間の血液希釈体外循環を行ない実験的に検討した. この場合の血液性状は赤血球数, Hb, GB, 血小板数, 白血球数, 血漿蛋白量, 血漿Hb量, 血液血漿血清粘稠度につき検討し, さらにpH, 焦性ブドウ酸, 乳酸の変化, 腎血流量および血圧と腎血流量との関係を検討した結果, 特に血液性状では赤血球数, Hb, 血漿蛋白量, 血液血漿血清粘稠度は灌流初期20-30%以内の減少が生ずるが, 血小板数, 白血球数, 血漿Hb量の変動は, ほぼ全血例と等しく, 灌流中各液で多少の差があるも灌流後1時間でほぼ術前値に復し, 術後早期に貧血が現れるが術後4週間で術前値に回復し, 全血例も含め長期生存例を得た. 故にわれわれは前記条件での血液希釈体外循環が十分安全である事を確認し, 臨床的に. 小児の心房中隔欠損症に5%Gを使用し, Kay-Coross型人工肺を使用した全血例と血液性状を比較したが, 灌流初期希釈の影響は術前の赤血球数, Hbを29%, 血漿蛋白量を25%, 血液粘稠度を30%減少させるも, 血小板数の50%, 白血球数の35%の減少は全血使用例とほぼ同じであり, 血漿Hb量も46.5mg/%と低値であった. しかし灌流時間が1時間前後である事, 灌流量が1リットル/minまであること, 体重に制限がある事など2, 3の欠点はあるが血液節減, 血清肝炎, 不適合輸血の防止, 良好な静脈還流の維持, さらにdisposable, であり安價な事など多くの利点があるため, われわれは今後症例に応じ小型人工肺の適応性を考慮, し血液希釈体外循環を臨床に使用してゆくつもりである.
ISSN:0546-1448