先天性第VII因子欠乏症に対する血清輸注の知見

演者らは本邦における最初の先天性第VII因子欠乏症を昨年の本学会で報告した. 症例を略記すると24才の女子で家族歴には父母同志の従兄妹の血族結婚がある外特記事項はない. 既往歴としては幼少より鼻出血, 出血斑による出血素因を認む外15才に一度の大量鼻出血を訴え, 18才に至り出血傾向が増強し, 動犀, 腹痛を訴え当内科に入院した. 入院時血清生化学検査では異常なし, 血液検査では軽度の低色素性貧血を認めるが栓球に異常はなく, 凝血学的にはプロトロンビン時間の延長(59.4``)(Quickの一段法)を認めるがSeegersの2段法では26a吋mlで正常値を示しプロトロンビン時間の補正試験で正常...

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Published in日本輸血学会雑誌 Vol. 10; no. 2; pp. 61 - 62
Main Authors 勝沼英宇, 武勝博, 浮田実
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本輸血学会 1963
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ISSN0546-1448

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Summary:演者らは本邦における最初の先天性第VII因子欠乏症を昨年の本学会で報告した. 症例を略記すると24才の女子で家族歴には父母同志の従兄妹の血族結婚がある外特記事項はない. 既往歴としては幼少より鼻出血, 出血斑による出血素因を認む外15才に一度の大量鼻出血を訴え, 18才に至り出血傾向が増強し, 動犀, 腹痛を訴え当内科に入院した. 入院時血清生化学検査では異常なし, 血液検査では軽度の低色素性貧血を認めるが栓球に異常はなく, 凝血学的にはプロトロンビン時間の延長(59.4``)(Quickの一段法)を認めるがSeegersの2段法では26a吋mlで正常値を示しプロトロンビン時間の補正試験で正常血漿子又は血清で補正されるが正常BaSO_4 血漿では補正されなかった. 又患者BaSO_4 血漿及び血清によるトロンボプラスチン生成試験では何れも正常値を示した. 又蛇毒試験では蛇毒時間の延長を認めず, 又vitamin K100mg負荷試験でもプロトロンビン時間の短縮は得られなかった. 以上の成績から本症例を先天性第VII因子欠乏症と診断し, 本患者に採血後5時間4日, 14日の血漿及び7日間保存血清(血清中のトロンビンは1%線維素原液を凝固せしめない事を確認している)を夫々100cc輸注した所, 明らかに5時間後の新鮮血漿が他の保存血漿よりもプロトロンビン時間を短縮し, 何れも24時間後にプロトロンビン時間が前値に復した. 然るに7日保存血清では輸注後, プロトロンビン時間は他の血漿同様短縮すると同時に輸注後48時間経過しても前値より稍々高い値を示した. 換言すれば新鮮血清は新鮮血漿や他の保存血清よりも輸注後第VII因子の消失が緩徐であったと云う事が出来よう. この事実は今後先天性第V咽子欠乏症の治療に示唆する所があり, Newcomb上らの云う新鮮血漿大量輸注と比較検討を要すべき問題と考える.
ISSN:0546-1448