1-5-20 胸部食道癌術後の反回喉頭神経麻痺─経口摂取開始時期が遅れるのはどんな場合?
【はじめに】 胸部食道癌手術(食道切除・胃管再建術・リンパ節郭清)の術後(以下, 食道癌術後)の合併症として反回喉頭神経麻痺(以下, RPNP)がある. 嗄声を呈するほか, 時に重度の嚥下障害も呈する. 一方, 同病態に関する嚥下リハの立場からの報告は少ない. 演者らは, どのような食道癌術後RPNPで経口摂取が遅れるのかを分析した. 【対象と方法】 食道癌術後RPNPによる嚥下障害ため術後通常食(=消化食ハーフ)の開始時期が遅れた過去三年間の10例を後方視的に検討した. RPNP以外の要因で絶飲食などとされた例(術後縫合不全, 吻合部狭窄, その他)は対象から除外してある. 平均年齢63.0...
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Published in | 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 14; no. 3; p. 360 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
2010
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Summary: | 【はじめに】 胸部食道癌手術(食道切除・胃管再建術・リンパ節郭清)の術後(以下, 食道癌術後)の合併症として反回喉頭神経麻痺(以下, RPNP)がある. 嗄声を呈するほか, 時に重度の嚥下障害も呈する. 一方, 同病態に関する嚥下リハの立場からの報告は少ない. 演者らは, どのような食道癌術後RPNPで経口摂取が遅れるのかを分析した. 【対象と方法】 食道癌術後RPNPによる嚥下障害ため術後通常食(=消化食ハーフ)の開始時期が遅れた過去三年間の10例を後方視的に検討した. RPNP以外の要因で絶飲食などとされた例(術後縫合不全, 吻合部狭窄, その他)は対象から除外してある. 平均年齢63.0歳(53~75歳), 男性8例, 女性2例, 嗄声の発現は平均術後3.1日(0~9日), 声帯麻痺のタイプは片側3例, 両側6例, 未確認1例であった. 全例, 術後1週過ぎからSTが介入し, 発声発語器官訓練, 嚥下訓練・指導, などを行った. うち6例にVFを施行した. 術後通常食の開始時期の遅れについて, 以下との関連性を検討した;声帯麻痺のタイプ, 嗄声の詳細(GRBAS), 嗄声の経過, 発声持続時間(MPT), 咽頭反射, 反復唾液嚥下試験(RSST), 改訂水飲み試験(MWST), およびVF所見. 【結果】 声帯麻痺のタイプ, GRBAS, 嗄声の経過, MPT, 咽頭反射, MWSTプロフィールについては, 通常食開始の遅れとの関連性が示されなかった. RSSTは全例正常であった. 嗄声の重症度と嚥下障害の重症度は一致しなかった. 嚥下障害の重症度判断には, 一般所見では湿性嗄声の如何に注目するのがある程度有用と思われたが, 最も確実な判断材料はVFから得られる所見であると考えられた. 【結語】 通常食開始の遅れのあった食道癌術後RPNP例では, (1)声質が常時湿性であったり, 直接嚥下訓練中やMWST中の声質の湿性化が顕著であった, (2)VFにおいては, 各種代償手段が誤嚥の軽減に対しほとんど無効であった, 以上2点の特徴が挙げられた. |
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ISSN: | 1343-8441 |