II-4-15 胃瘻増設後1年8カ月の訓練を経て全量経口摂取が可能となり, 胃瘻を閉鎖しえた陳旧性脳血管障害の一例

今回, 脳血管障害後の重度の嚥下障害により胃瘻造設を行った症例で, 胃瘻造設後1年8カ月の訓練を経て全量経口摂取が可能となり, 胃瘻を閉鎖しえた陳旧性脳血管障害の一例を経験したので報告する. 【症例】56歳, 男性. 平成18年12月23日クモ膜下出血(右椎骨動脈解離性脳動脈瘤)によりA病院でコイル塞栓術が施行され, 平成19年1月26日B病院に転院. 2月15日LPシャント術が施行され, その後, 重度の嚥下障害が続いたため2月28日胃瘻造設術が施行された. 同病院で嚥下障害グレード1の2(藤島)と評価され, 3月17日より胃管嚥下訓練などが施行されていたが, 胃管嚥下しても胃管の感覚はない...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 13; no. 3; p. 441
Main Authors 高橋浩二, 宇山理紗, 綾野理加, 平野薫, 山下夕香里, 武井良子, 濱田浩美, 山川道代, 井原良明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2009
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Summary:今回, 脳血管障害後の重度の嚥下障害により胃瘻造設を行った症例で, 胃瘻造設後1年8カ月の訓練を経て全量経口摂取が可能となり, 胃瘻を閉鎖しえた陳旧性脳血管障害の一例を経験したので報告する. 【症例】56歳, 男性. 平成18年12月23日クモ膜下出血(右椎骨動脈解離性脳動脈瘤)によりA病院でコイル塞栓術が施行され, 平成19年1月26日B病院に転院. 2月15日LPシャント術が施行され, その後, 重度の嚥下障害が続いたため2月28日胃瘻造設術が施行された. 同病院で嚥下障害グレード1の2(藤島)と評価され, 3月17日より胃管嚥下訓練などが施行されていたが, 胃管嚥下しても胃管の感覚はないとのことで, 紹介により5月12日当科受診した. 現症ではBMI:15.6(Ht169.4cm, BW44.7kg), 三叉神経, 顔面神経, 舌下神経支配領域の異常所見なし. 右側口蓋反射減弱, 催吐反射減弱, 口蓋垂左側偏移, カーテン兆候がみられた. 嗄声はなく, RSST4回であった. 【経過】5月12日初診時にシャキヤーエクササイズ, 前傾姿勢による排出訓練を指導. 2度目の通院日の6月4日VF検査施行. 頭部前屈姿勢で食道入口部の開大不全と重度の不顕性誤嚥を認めた. 透視下で前傾姿勢による排出の効果を確認した後, 体幹左傾斜頸部右回旋姿勢を指示し, ヨーグルト状食品の一口量を誤嚥なく嚥下することを確認した. ただし, 連続嚥下すると中等度の不顕性誤嚥を認めた. 食道入口部の開大を目的としてバルーン拡張訓練を実施することとし, 透視下で同訓練を指導した. 以後シャキヤーエクササイズ, 食前食後の口腔清掃, 食前の40回のバルーン拡張訓練, 体幹左傾斜頸部右回旋姿勢による直接訓練ならびに前傾姿勢による排出訓練を行い, 平成20年4月21日より6日間の入院下集中訓練も実施した. 経口摂取量は増加していき, 同年10月より全量経口摂取となり12月に胃瘻を閉鎖した.
ISSN:1343-8441