EM4-2 摂食・嚥下リハビリテーションにおける作業療法のNew Secrets
現在の摂食・嚥下リハビリテーション(摂食・嚥下リハ)にかかる臨床場面においては, 積極的に作業療法士が関わることが少ないように思われる. しかし, 我々作業療法士が何気なく行ってきたことの中に, 摂食・嚥下リハにおけるOT(Occupational Therapy, OT)のNew Secrets(秘訣, 重要ポイント)が隠されているように思われる. 本稿では, これまで当院で行われてきた摂食・嚥下リハを振り返って, OTの視点から見つけ出される摂食・嚥下リハのSecretsについて触れてみたい. 当院では, 20年前より, 成人脳卒中患者の摂食・嚥下リハに作業療法士が介入してきた. 当初,...
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Published in | 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 13; no. 3; pp. 277 - 278 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
2009
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Summary: | 現在の摂食・嚥下リハビリテーション(摂食・嚥下リハ)にかかる臨床場面においては, 積極的に作業療法士が関わることが少ないように思われる. しかし, 我々作業療法士が何気なく行ってきたことの中に, 摂食・嚥下リハにおけるOT(Occupational Therapy, OT)のNew Secrets(秘訣, 重要ポイント)が隠されているように思われる. 本稿では, これまで当院で行われてきた摂食・嚥下リハを振り返って, OTの視点から見つけ出される摂食・嚥下リハのSecretsについて触れてみたい. 当院では, 20年前より, 成人脳卒中患者の摂食・嚥下リハに作業療法士が介入してきた. 当初, 日常生活動作のリハビリテーション中に「食べ物がうまく食べられない」, 「大好きなコーヒー牛乳を飲むとむせる」などの患者からの声があがったことから, 作業療法士として, これらの患者の声に何とか応えられないか, といったことが始まりであった. 摂食・嚥下リハに対する十分な知見などが得られていなかったため, 感覚刺激の重要性を謳ったMargaret Roodの理論を用いた神経筋促通法手技としての顔面・口腔のマッサージ, 風船を利用した感覚刺激などを行っていた. 当時, これらの介入を行う中で咽頭後壁や奥舌のマッサージにより嘔吐反射が出現しやすくなり, さらにそれに続いて嚥下反射が惹起されやすくなることを経験し, これを訓練につなげられないかなどとのユニークな発想と自由な視点からの議論がなされたこともあった. ここで大きなSecretsとして, OTの「発想・創造」があげられるように思われる. 当時, 患者との会話の中で聞いた, たった一言に対して, それを解決しようと様々な工夫をしたのである. 作業療法士は作業を媒介として治療に役立てるプロフェッショナルであり, 様々な創意工夫が摂食・嚥下リハの臨床においても役立っていくものと考えている. その後も, 当院において摂食・嚥下リハを行っていく中で, 食事に集中できない患者に対して, ベッドサイドのカーテンをしきりとして使用することで食事に集中できる環境をセッティングしたり, 逆に大勢で食べる, 楽しく食べられるようになることを念頭に, ベッド以外での摂食・嚥下リハを行っている. また, 安全を考慮しつつ, 「食べられる」から「食べたい」ものを提供したい, という考えから, 管理栄養士とも協力を行ってきた. さらに, 自分で「食べられる」ための工夫として, 自助具の工夫, 姿勢の工夫も大切である. 食物だけでなく食器に関しても日常で使用する瀬戸物などの食器を利用した食事も試みている. 介助する側の態度, 姿勢, また声かけひとつでも患者の反応は変わってくる. もちろん, 嚥下機能そのものの維持・回復は重要であるが, 「環境整備」「日常生活のなかの摂食・嚥下」として摂食・嚥下リハのあり方を考えることがOTの中のSecretsのひとつではないだろうか. |
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ISSN: | 1343-8441 |