II-6-20 頸部回旋と飲食物の物性が嚥下動態に与える影響~嚥下障害患者と健常人の比較
【目的】頸部回旋法, 飲食物の物性調整法は嚥下機能代償法として知られているが, 適切な角度物性と嚥下動態との相関関係について不明な点も多い. 今回は, VF画像より, 健常成人と嚥下障害患者の嚥下動態の比較を試みた【方法】健常群は, 研究内容を説明して同意を得た嚥下障害の既往を持たない成人10名とした(朝日大学倫理委員会承認). 90W/V%バリウムと造影剤加プリンを検査試料とし, プリンは随意の一口量を, バリウムは5ccを指示嚥下させた. 頸部回旋無し, 左回旋(約45度), 左最大回旋位(約90度)について一回ずつ正面撮影を行った. 画像上の喉頭蓋谷を基準として, 検査試料が能動輸送され...
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Published in | 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 12; no. 3; p. 423 |
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Main Authors | , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
2008
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ISSN | 1343-8441 |
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Summary: | 【目的】頸部回旋法, 飲食物の物性調整法は嚥下機能代償法として知られているが, 適切な角度物性と嚥下動態との相関関係について不明な点も多い. 今回は, VF画像より, 健常成人と嚥下障害患者の嚥下動態の比較を試みた【方法】健常群は, 研究内容を説明して同意を得た嚥下障害の既往を持たない成人10名とした(朝日大学倫理委員会承認). 90W/V%バリウムと造影剤加プリンを検査試料とし, プリンは随意の一口量を, バリウムは5ccを指示嚥下させた. 頸部回旋無し, 左回旋(約45度), 左最大回旋位(約90度)について一回ずつ正面撮影を行った. 画像上の喉頭蓋谷を基準として, 検査試料が能動輸送される経路を, 中央, 左右, 左側(回旋側), 右側(非回旋側)に分類した. また, 制御を失った試料の不随意な咽頭への滑落(spillage)の有無を記録した. 嚥下障害患者群は, 自立的に嚥下体位がとれる口腔悪性腫瘍, パーキンソン病認知症25例で, 健常群と同様に画像を解析した. 【結果】健常群では, 回旋位, 最大回旋位とも, 検査試料が回旋側を通る事はなかった. 非回旋側へ誘導される例は, 回旋位よりも最大回旋位で多く(15%:50%), プリンよりも液体で多かった(最大回旋位にて30%:75%). 最大回旋時に液体のspillageを4例に認めた. 患者群の回旋位で, 試料が非回旋側へ誘導されていたのは, 液状試料75%, 粘性試料71%であった. 検査試料が回旋側を通る事が, 液状試料25%, 粘性試料14%で認められた, spillageは, 回旋無しで6例, 頸部回旋位で1例に認めた. 【考察】頸部回旋角度を大きくする程, 非回旋側への飲食物の誘導効果が高くなるが, 飲食物の制御が難しくなると思われる. 健常人より嚥下機能の劣る嚥下障害患者では, 回旋なしでも試料の経路が片側に偏る場合があり, 試料の性状, 頸部回旋角度を調整しても動態を調整できない例がみられた. 今後は嚥下障害患者の姿勢調整に与える因子の解析が課題である. |
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ISSN: | 1343-8441 |