II-5-7 口腔期障害と認知機能障害の関連

【はじめに】舌の運動障害が認められない例においても, 食塊を口腔から咽頭にスムーズに送り込めない所謂hesitationを示す口腔期障害例がある. 我々はこのような口腔期障害を示す脳血管障害例において, 認知機能障害とhesitationとの関連について検討した. 【対象と方法】対象は, (1)発症から1ヶ月以上が経過している脳血管障害例, (2)ビデオ嚥下造影検査(VF)施行時の意識レベルはJapan Coma ScaleでI群または0点(清明)であった例, (3)口頭命令または模倣命令によって開口障害, 舌の前後・左右・上下方向への運動障害が共に認められない例, 計15例(男性11例, 女...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 12; no. 3; p. 400
Main Authors 畑裕香, 清水隆雄, 藤岡誠二, 辻卓司
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2008
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Summary:【はじめに】舌の運動障害が認められない例においても, 食塊を口腔から咽頭にスムーズに送り込めない所謂hesitationを示す口腔期障害例がある. 我々はこのような口腔期障害を示す脳血管障害例において, 認知機能障害とhesitationとの関連について検討した. 【対象と方法】対象は, (1)発症から1ヶ月以上が経過している脳血管障害例, (2)ビデオ嚥下造影検査(VF)施行時の意識レベルはJapan Coma ScaleでI群または0点(清明)であった例, (3)口頭命令または模倣命令によって開口障害, 舌の前後・左右・上下方向への運動障害が共に認められない例, 計15例(男性11例, 女性4例)である. 方法は, (1)VFによって口腔期障害の有無について評価, (2)口腔期障害の有無と平均年齢について検討, (3)口腔期障害の有無と脳血管障害発症からの経過日数について検討, (4)N式老年者用精神状態尺度(NMスケール)を用いて, 認知機能を定量化し, その結果から口腔期障害の有無と認知機能障害の関連について検討した. 【結果】(1)口腔期障害を認める群(7例)と口腔期障害を認めない群(8例)の間には年齢差, 脳血管障害発症からの経過時間に明らかな差は認められなかった. (2)口腔期障害を認める群と口腔期障害を認めない群の間にはNMスケールの平均点数に明らかな違いが認められた(p=0.002628). 【考察】脳血管障害例で舌の運動障害が認められない口腔期障害例では認知機能障害が強い. この結果は, 食塊を口腔から咽頭にスムーズに送り込むためには十分な認知機能が必要であり, 認知機能障害はhesitationの出現に大きく関与していることを示している.
ISSN:1343-8441