I-P4-18 長期にわたる摂食・嚥下リハビリテーションと他職種連携により高齢の嚥下障害患者の胃瘻離脱に至った一例

【はじめに】当科では, 隣接する日本大学医学部駿河台病院入院中の摂食機能障害患者に対し, 摂食・嚥下リハビリテーションを行っている. 今回, 紹介された患者が退院後も転院先と居宅への往診を行い, 他職種連携によりで経口摂取可能となった一例を経験したので報告する. 【症例】90歳男性. 平成17年2月に胸膜炎により当大学医学部駿河台病院に入院加療中であったが, 同年5月に嚥下機能が低下したことから, 主治医により嚥下機能評価依頼を受けた. 初診時意思の疎通はあるものの, 自力での起床, 車椅子への移乗は困難で, 水飲みテストでは弱いムセが認められた. また, 喀痰が多く吸引の回数が頻回であった....

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 12; no. 3; p. 354
Main Authors 齋藤仁子, 人見涼露, 寺本浩平, 戸原玄, 植田耕一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2008
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:【はじめに】当科では, 隣接する日本大学医学部駿河台病院入院中の摂食機能障害患者に対し, 摂食・嚥下リハビリテーションを行っている. 今回, 紹介された患者が退院後も転院先と居宅への往診を行い, 他職種連携によりで経口摂取可能となった一例を経験したので報告する. 【症例】90歳男性. 平成17年2月に胸膜炎により当大学医学部駿河台病院に入院加療中であったが, 同年5月に嚥下機能が低下したことから, 主治医により嚥下機能評価依頼を受けた. 初診時意思の疎通はあるものの, 自力での起床, 車椅子への移乗は困難で, 水飲みテストでは弱いムセが認められた. また, 喀痰が多く吸引の回数が頻回であった. 初回のVF検査では体位を様々に調整しても誤嚥し, 喀出不能であった. 口腔ケアと複数の間接訓練を行い, 2ヵ月後にも嚥下機能の変化が認められないことからPEGを造設した. その後在宅療養となり往診による訓練を継続した. また, VFも2ヶ月おきに行った. この際, 家族・担当主治医・看護師・ケアマネージャー・ヘルパー・作業療法士と連携し, 自宅で毎日訓練を行えるよう指導した. 更に2ヵ月後, 嚥下機能が改善され経口摂取を開始し, その2ヵ月後1日3食の経口摂取が可能と判断できたため, PEGは残したまま全面的に経口摂取へ移行した. その後は自宅での訓練を継続してもらい外来フォローとなって, 平成19年10月に家族が担当主治医と相談しPEGを抜去した. 義歯を装着することで現在は常食を自立摂取している. 【考察】本症例は一度PEGの造設を行ってから経口摂取機能を獲得してPEGの除去に至った. 本症例では長期にわたり, 適切な摂食・嚥下リハビリテーションを行えたこと, 他職種の全面的な協力を得られたこと, 患者のモチベーションを維持できたことが成功へ結びついたと考える. 対応が長期にわたる症例では, 環境因子の設定がリハビリの効果に大きく影響することが示された.
ISSN:1343-8441