I-P4-17 脳梗塞発症後, 急性期病院から在宅で亡くなるまで長期間摂食機能療法を継続した症例

【はじめに】脳梗塞発症後, 急性期病院入院中から在宅にて亡くなるまで約2年間対応した症例を経験した. 摂食・嚥下機能的な観点に加え, 高齢者終末期医療としての摂食機能療法についても考察したので報告する. 【症例】初診時92歳, 男性. 平成17年10月脳梗塞発症による左上下肢不全麻痺. 栄養摂取方法は経鼻経管栄養. 【経過】平成17年11月9日経口摂取可否の判断目的で本学医学部付属病院循環器科より当科に依頼があった. 11月18日の1回目のVFでは誤嚥は認められず, 直接訓練を開始した. しかし, 12月6日に小脳梗塞を発症したため直接嚥下訓練を中止し, 間接訓練のみ施行することとなった. そ...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 12; no. 3; pp. 353 - 354
Main Authors 溝口尚子, 齋藤仁子, 人見涼露, 岩上朋代, 深野美佳, 戸原玄, 植田耕一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2008
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Summary:【はじめに】脳梗塞発症後, 急性期病院入院中から在宅にて亡くなるまで約2年間対応した症例を経験した. 摂食・嚥下機能的な観点に加え, 高齢者終末期医療としての摂食機能療法についても考察したので報告する. 【症例】初診時92歳, 男性. 平成17年10月脳梗塞発症による左上下肢不全麻痺. 栄養摂取方法は経鼻経管栄養. 【経過】平成17年11月9日経口摂取可否の判断目的で本学医学部付属病院循環器科より当科に依頼があった. 11月18日の1回目のVFでは誤嚥は認められず, 直接訓練を開始した. しかし, 12月6日に小脳梗塞を発症したため直接嚥下訓練を中止し, 間接訓練のみ施行することとなった. その後状態が安定し直接訓練を再開したが, 栄養改善には至らず, 平成18年2月3日PEGを増設した. 同年5月30日に2回目のVFを実施したが, 誤嚥が認められ, かつ送り込みが以前より不良であった. 舌運動の改善を中心とした間接訓練を継続した結果, 1日数口のゼリー, ペースト, 液体を用いた直接訓練が可能となり, 平成19年2月11日に自宅退院となった. 退院後, 月1回の往診にてフォローアップを行い, その間, 家族に対して口腔ケアと摂食の指導を行った. 栄養としての経口摂取は確立されなかったが, 味を嗜む程度での直接訓練は続けられ, 肺炎などによる発熱を起こすことなく, 同年11月に心不全で亡くなった. 【考察】脳梗塞発症後から在宅で亡くなるまで約2年間の診療を行った. その間, 顕著な摂食機能の改善はみられなかったが, 全身状態の維持安定は図ることができた. 現行の医療制度では長期に及ぶ慢性期のリハビリテーションは, 介護関係者, 家族に頼らざるを得ない, 今後在宅要介護高齢者が増加する現状を踏まえると, 更に介護関係者や家族に日常的な訓練を依頼するという形が増えよう. その場合, 医学的に適切な指導のみならずモチベーションの継続が同時に不可欠となると考えられた.
ISSN:1343-8441