I-6-4 嚥下造影時に誤嚥した患者の画像追跡

【背景と目的】中等度以上の嚥下障害患者では嚥下造影(VF)検査中に誤嚥を認めることが少なくない. これは, 誤嚥のリスクを少なくするための食材や姿勢を決定する目的としてVFが位置づけられているためである. しかし, VF施行医は患者のその後のレントゲン像を必ずしも追跡できない. 国立病院機構15施設の神経内科の調査ではVF1613件中, のべ425回の誤嚥を認めた. 本研究では, 共同研究3施設において, 過去3年間にVFにてバリウム(B)および血管造影剤イオパミドール(I)いずれかを誤嚥した患者のVF後のレントゲン画像を追跡した. 【方法】1)3施設のVFで誤嚥した113例中, 本研究に文書...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 12; no. 3; p. 313
Main Authors 野崎園子, 山本敏之, 本吉慶史, 岡田稔子, 高尾正一郎
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2008
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Summary:【背景と目的】中等度以上の嚥下障害患者では嚥下造影(VF)検査中に誤嚥を認めることが少なくない. これは, 誤嚥のリスクを少なくするための食材や姿勢を決定する目的としてVFが位置づけられているためである. しかし, VF施行医は患者のその後のレントゲン像を必ずしも追跡できない. 国立病院機構15施設の神経内科の調査ではVF1613件中, のべ425回の誤嚥を認めた. 本研究では, 共同研究3施設において, 過去3年間にVFにてバリウム(B)および血管造影剤イオパミドール(I)いずれかを誤嚥した患者のVF後のレントゲン画像を追跡した. 【方法】1)3施設のVFで誤嚥した113例中, 本研究に文書にて同意を得られたものについて, 患者情報の集積と胸部CTの撮影をおこなった. 2)BおよびIの誤嚥のいずれの誤嚥かをマスキングの上, 2名の放射線診断医が胸部CTの画像診断を独立しておこなった. 【結果】「B残留ありまたは疑い(以下B残留)」と診断したのは, 診断医1:2の順に, B誤嚥11例のうち1例:1例, Iのみ誤嚥した13例ではB残留の診断は3例:4例, BとI両方(食材により造影剤が異なる)の誤嚥10例では5例:4例であった. BおよびIの濃度は30~50%である. 【考察】B誤嚥のうち肺野への残留を認める・疑われるものは6/21(29%)であった. 一方, VF上はI誤嚥であるにもかかわらず, B残留と診断されたのは4/13(30%)であった. このうち, B混入の模擬食品も使用され, VF上B誤嚥はないが咽頭残留がみられた2例は, 咽頭残留物が検査後気道へ流入した可能性が考えられる. 他の2例はVFにBを用いておらず, 肺野の石灰化などとの鑑別が困難であった可能性がある. 今回の研究では, 1)B誤嚥後の肺野残留頻度2)咽頭残留BのVF後の誤嚥の可能性3)他の肺病変とB残留との鑑別上の問題が明らかとなった. 患者の病状に柔軟に対応できる造影剤の選択が望ましいと考える.
ISSN:1343-8441