II-4-20 脳性麻痺の痙性斜頸に対するA型ボツリヌス毒素(BTX-A)治療が食・嚥下機能に及ぼす影響の検討

「目的」摂食・嚥下障害をもつ脳性麻痺患者の痙性斜頚に対するA型ボツリヌス毒素(BTX-A)療法が, 摂食・嚥下機能にどのように影響にするか調査する. 「方法」対象は, 当センターでBTX-A療法をおこなった脳性麻痺患者のうち, 摂食・嚥下障害を合併しBTX-A療法と並行して摂食・嚥下訓練をおこなった4例で, 治療前後の臨床像および摂食・嚥下機能の変化につき検討した. 「結果」1名で咀嚼運動が改善しむせが軽減し, 2名で頸部後屈や全身の筋緊張が緩和され食事中の姿勢が崩れなくなった. 嚥下第2相は2名で容易になったが, 2名で緩慢になった. 1名では下顎の動きが悪くなり一過性に咀嚼が困難となった....

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 11; no. 3; p. 330
Main Authors 曽根翠, 荒木克仁, 田中豊明, 及川むつ子, 大和吉朗, 矢内裕子, 水上美樹, 元橋功典, 稲田裕仁, 日野光子, 吉野綾子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2007
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ISSN1343-8441

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Summary:「目的」摂食・嚥下障害をもつ脳性麻痺患者の痙性斜頚に対するA型ボツリヌス毒素(BTX-A)療法が, 摂食・嚥下機能にどのように影響にするか調査する. 「方法」対象は, 当センターでBTX-A療法をおこなった脳性麻痺患者のうち, 摂食・嚥下障害を合併しBTX-A療法と並行して摂食・嚥下訓練をおこなった4例で, 治療前後の臨床像および摂食・嚥下機能の変化につき検討した. 「結果」1名で咀嚼運動が改善しむせが軽減し, 2名で頸部後屈や全身の筋緊張が緩和され食事中の姿勢が崩れなくなった. 嚥下第2相は2名で容易になったが, 2名で緩慢になった. 1名では下顎の動きが悪くなり一過性に咀嚼が困難となった. 「考察」BTX-A療法は脳性麻痺による痙性斜頚に対する治療法として我国で広く普及し始めたが, 治療中に誤嚥性肺炎を併発した例があることから, 摂食・嚥下障害のある症例への適応は難しいとされてきた. 我々は, 著しい後屈や筋緊張亢進が軽減すれば顎や舌の動きが改善し, 摂食・嚥下障害も改善するものと予想して, 約1週間の入院のもとに当療法を実施した. 更に, 治療開始前から摂食機能を評価し, 退院後早期から摂食・嚥下機能の変化に応じた食事姿勢・食形態・介助方法を指導した. BTX-A療法は摂食・嚥下機能に少なからず影響することが明らかになった. これらの影響の中には機能改善に働くものが多かったが, 機能低下に働くものもあったため, 治療は入院下で細心の注意をしながら実施し, 摂食・誤嚥機能の評価・訓練を並行して行う必要があると思われた. 「結論」摂食・嚥下障害のある脳性麻痺患者の痙性斜頚にBTX-A療法を行う場合, 適切な摂食・嚥下訓練を並行しておこなえば, 機能改善がもたらされるとの結論にいたった.
ISSN:1343-8441