I-P3-8 多系統萎縮症(MSA)における口腔機能障害の特徴

「目的」MSAは, 運動失調, パーキンソニズム, 自立神経障害を呈する進行性疾患である. 本疾患では, 運動性低下とともに摂食・嚥下機能障害も見られるようになる. その中で咀嚼や嚥下口腔期に関連する機能障害としては, 緩慢な顔面運動, 食塊移送障害などがあげられる. これらの患者では流涎などを訴える例が少なくないが, MSAにおける口腔機能の障害を詳細に検索した報告は少ない. 本研究は口腔障害の特徴を明らかにする為にMSAと健常者の口腔機能, 特に舌機能について比較した. 「方法」新潟大学医歯学総合病院神経内科で診断されたMSA(年齢:59.0±2.8)とコントロール(年齢:69.5±4.7...

Full description

Saved in:
Bibliographic Details
Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 11; no. 3; pp. 276 - 277
Main Authors 柴田佐都子, 大瀧祥子, 井上誠, 山田好秋
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2007
Online AccessGet full text

Cover

Loading…
More Information
Summary:「目的」MSAは, 運動失調, パーキンソニズム, 自立神経障害を呈する進行性疾患である. 本疾患では, 運動性低下とともに摂食・嚥下機能障害も見られるようになる. その中で咀嚼や嚥下口腔期に関連する機能障害としては, 緩慢な顔面運動, 食塊移送障害などがあげられる. これらの患者では流涎などを訴える例が少なくないが, MSAにおける口腔機能の障害を詳細に検索した報告は少ない. 本研究は口腔障害の特徴を明らかにする為にMSAと健常者の口腔機能, 特に舌機能について比較した. 「方法」新潟大学医歯学総合病院神経内科で診断されたMSA(年齢:59.0±2.8)とコントロール(年齢:69.5±4.7)の健常者を比較した. 検査項目は, 唾液分泌量, 舌機能, 運動能力と口腔衛生状態とした. 唾液は安静唾液と刺激唾液, 舌機能は/ta/ /ka/の音節の反復速度, 舌尖を左右口角にタッチする交互反復運動速度と舌最大突出圧を測定した. 運動能力は, FIMの運動項目と握力を測定した. 口腔衛生状態は, O'Learyのプラークコントロールレコード(PCR値)を測定した. 「結果」MSAを健常者と比較すると, 唾液分泌量は安静唾液, 刺激唾液ともに低下していた. 舌機能の舌最大突出圧, /ta/ /ka/の音節の反復速度と交互反復運動速度においても低い結果となった. また, 日常生活動作ではFIM運動項目平均, 握力ともに低下が見られた. 口腔衛生状態のPCR値は高い値を示した. 「考察」MSAでは唾液分泌量と舌機能の低下がみられた. 臨床上でみられる流涎は, 唾液の分泌量の増加からではなく, 顔面運動の緩慢さや舌機能の低下から口腔に貯留した唾液が口腔外へ流れ出るものと考えられた. また, それらの運動能力の低下は, 食塊移送や唾液の潤滑作用を阻害し, 唾液の抗菌メカニズムである自浄作用も低下させ, 口腔衛生状態を悪化させる可能性があると考えられた.
ISSN:1343-8441