I-P1-13 咽頭期嚥下の機能改善により食道からの逆流症状が軽減した一例
【目的】咽頭食道憩室は咽喉頭に近く, 咽頭異常感や嘔吐, 嚥下障害を伴う場合がある. 今回, 脳血管障害発症後に嚥下障害を呈し, 食道憩室と考えられた部位からの逆流を生じた一例を経験したので報告する. 【症例】81歳男性. H16.2.19, 嘔吐と気分不良にてB院受診し, 多発性脳梗塞と診断. 経口摂取開始するが, 嚥下困難と咽頭違和感を訴え絶食. 同年2.26当院転院. ADLは全自立, 発話明瞭度1であった. 嚥下造影検査(VF)では嚥下反射遅延, 舌骨喉頭挙上量の低下, 咽頭期incoordinationがみられた. 咽頭食道接合部に嚢状に突出した部位を認め, 喉頭下降途中より造影剤の...
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Published in | 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 9; no. 3; p. 329 |
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Main Authors | , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
2005
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ISSN | 1343-8441 |
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Summary: | 【目的】咽頭食道憩室は咽喉頭に近く, 咽頭異常感や嘔吐, 嚥下障害を伴う場合がある. 今回, 脳血管障害発症後に嚥下障害を呈し, 食道憩室と考えられた部位からの逆流を生じた一例を経験したので報告する. 【症例】81歳男性. H16.2.19, 嘔吐と気分不良にてB院受診し, 多発性脳梗塞と診断. 経口摂取開始するが, 嚥下困難と咽頭違和感を訴え絶食. 同年2.26当院転院. ADLは全自立, 発話明瞭度1であった. 嚥下造影検査(VF)では嚥下反射遅延, 舌骨喉頭挙上量の低下, 咽頭期incoordinationがみられた. 咽頭食道接合部に嚢状に突出した部位を認め, 喉頭下降途中より造影剤の逆流を生じ, 嚥下終了後に咽頭流入がみられた. 頚部右回旋で咽頭クリアランスは向上, 食道停留, 逆流も軽減した. 定量的評価として, PHASEとSTAGEのVF時間解析を行った. 初回評価時の咽頭通過時間(PTT)及び咽頭期遅延時間(PDT)は4秒以上延長することもあった. 【経過】Mendelsohn手技, 嚥下パターン訓練, 頚部右回旋でゼリー食による直接訓練を実施. 嚥下反射惹起に改善を認め, むせと咽頭違和感は軽減した. 14日目のVFではPDT, 咽頭期coordinationが改善. 固形物の梨状窩残留と咽頭食道接合部からの少量の逆流を認めたが, 液体の交互嚥下が有効であった. 36日目より頚部回旋, 水分との交互嚥下にて軟菜食開始. 58日目のVFで咽頭食道接合部からの逆流は消失したが, 少量の食道停留を認めた. VF時間解析ではPTT, PDT, 咽頭反応時間(PRT)の短縮を認めた. 液体の交互嚥下の継続を指導した後, 自宅退院となった. 【考察】本例の嚥下障害は, 脳血管障害による咽頭期障害に食道疾患が影響した病態と考えられた. 咽頭期coordination, 食塊の推進速度向上といった咽頭期嚥下の改善が食道停留及び逆流軽減に関与したものと考えられた. |
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ISSN: | 1343-8441 |