II-3-4 嚥下時の舌運動を再現したロボットの試作

生理的な嚥下運動を解明することは, 嚥下障害のメカニズム解明の前提である. しかし嚥下運動は, 口腔や咽頭, 喉頭の諸器官が関与する複雑で速い運動であり, 現状では十分には解明されていない. 特に鼻咽腔や中咽頭腔, 喉頭腔の閉鎖運動と食道開大の詳細な仕組み, およびこれらの運動のタイミングを従来の方法で解析することはできなかった. そこで4次元MRIを使ってこれらの運動を可視化する研究を行い, 舌運動, 声門閉鎖運動, 鼻咽腔閉鎖運動についてはすでに報告した. 本研究によって嚥下の生理運動が解明されつつあるので, 現在これらのデータをもとに, 生理的な嚥下運動を再現したロボットを開発している....

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 8; no. 2; p. 260
Main Authors 道脇幸博, 斎藤真由, 斉藤浩人, 小林 宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2004
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ISSN1343-8441

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Summary:生理的な嚥下運動を解明することは, 嚥下障害のメカニズム解明の前提である. しかし嚥下運動は, 口腔や咽頭, 喉頭の諸器官が関与する複雑で速い運動であり, 現状では十分には解明されていない. 特に鼻咽腔や中咽頭腔, 喉頭腔の閉鎖運動と食道開大の詳細な仕組み, およびこれらの運動のタイミングを従来の方法で解析することはできなかった. そこで4次元MRIを使ってこれらの運動を可視化する研究を行い, 舌運動, 声門閉鎖運動, 鼻咽腔閉鎖運動についてはすでに報告した. 本研究によって嚥下の生理運動が解明されつつあるので, 現在これらのデータをもとに, 生理的な嚥下運動を再現したロボットを開発している. 今回はそのうち, 嚥下時の舌運動に関して報告する. ロボットの骨格系はCT画像をもとに光造形技術によって製造し, 軟組織部分はシリコンを主体として製作した. 舌運動のデータのうち, 舌骨の運動は嚥下造影画像のデータからモデルを作り, 舌体や舌根の運動は4次元MRIのデータから再現した. 舌を動かす仕組みは, 圧縮空気と電空レギュレーターを使ってMcKibben型人工筋肉をPCで制御する方式である. その結果, MRI画像の舌運動を模した運動が可能になり, 実際に固形物を咽頭に送り込むことができるようになった. 本研究から嚥下運動をロボットで再現することは可能であり, 将来は嚥下障害のメカニズムの解明につながることが示唆された.
ISSN:1343-8441