I-P3-17 嚥下造影検査上異常所見に乏しかったにもかかわらず摂食開始後誤嚥性肺炎をきたした3症例の検討

【目的】嚥下造影検査は嚥下機能評価において非常に重要な検査であり, 嚥下障害患者の安全な摂食条件を設定する上でも果たす役割は大きい. 今回嚥下造影検査上異常所見に乏しいにもかかわらず, 摂食開始後誤嚥による発熱を来した症例をもとに問題点を検討する. 【症例】症例1は87歳女性. 誤嚥性肺炎で入院, 摂食を開始されたところ発熱をきたした. 嚥下造影では誤嚥, 残留とも認めず食事を再開したところ, 肺炎を再燃し絶食にて改善した. 実際の食事場面において, 開始後約10分頃より摂食ペースが遅くなるなど疲労を疑わせる所見がみられていた. 症例2は90歳女性. 嚥下造影検査にて液状物で軽度の喉頭侵入を認...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 8; no. 2; p. 222
Main Authors 稲生 綾, 藤島一郎, 高橋博達, 黒田百合, 土居加奈子, 山田晶子, 北條京子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2004
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ISSN1343-8441

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Summary:【目的】嚥下造影検査は嚥下機能評価において非常に重要な検査であり, 嚥下障害患者の安全な摂食条件を設定する上でも果たす役割は大きい. 今回嚥下造影検査上異常所見に乏しいにもかかわらず, 摂食開始後誤嚥による発熱を来した症例をもとに問題点を検討する. 【症例】症例1は87歳女性. 誤嚥性肺炎で入院, 摂食を開始されたところ発熱をきたした. 嚥下造影では誤嚥, 残留とも認めず食事を再開したところ, 肺炎を再燃し絶食にて改善した. 実際の食事場面において, 開始後約10分頃より摂食ペースが遅くなるなど疲労を疑わせる所見がみられていた. 症例2は90歳女性. 嚥下造影検査にて液状物で軽度の喉頭侵入を認める以外異常なかったが, ミキサー食開始後肺炎をきたした. 以後摂食にて肺炎をきたし絶食にて改善する状況を繰り返した. 摂食中湿性咳嗽と唾液状の吸引物を認め, 唾液誤嚥の可能性が示唆された. 症例3は79歳男性. 嚥下造影でとろみにてごく軽度の咽頭残留をみる以外異常なく摂食を開始したところ肺炎をきたした. 摂食開始後20分過ぎるくらいからべとつくものでむせがみられていた. 【考察】嚥下造影検査上問題なくとも実際の食事により誤嚥をきたす症例について検討した. いずれも高齢者であり, 耐久性低下や唾液誤嚥などが原因となった可能性が考えられた. 摂食訓練をすすめるにあたり嚥下造影検査結果を参考にしつつ実際の食事場面での十分な注意が必要である.
ISSN:1343-8441