II-2-9 高速シネMRIによる嚥下運動の描出-第2報

現在, 嚥下動態の描出には嚥下造影検査が用いられている. しかし, 嚥下造影検査では骨を中心とした二次元画像しか得られず, さらにX線被爆の観点から繰り返して撮影することは困難である. 一方, MRIは軟組織の描出に優れ, 被爆の危険性がないため繰り返して検査をすることが可能であるが, 従来の方法では撮像に時間がかかるために嚥下運動の描出は難しかった. 今回われわれは, 同期サンプリング法を応用した高速シネMRIを用いて実時間での嚥下運動を再構築し舌運動の3次元動画像を得たので報告する. 対象は個性正常咬合を有する健常成人1名(25歳, 男性)である. MRI装置は島津-マルコーニMAGNEX...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 7; no. 2; p. 218
Main Authors 丹生かず代, 道脇幸博, 横山美加, 小澤素子, 衣松令恵, 森田真由, 小林 宏
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2003
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ISSN1343-8441

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Summary:現在, 嚥下動態の描出には嚥下造影検査が用いられている. しかし, 嚥下造影検査では骨を中心とした二次元画像しか得られず, さらにX線被爆の観点から繰り返して撮影することは困難である. 一方, MRIは軟組織の描出に優れ, 被爆の危険性がないため繰り返して検査をすることが可能であるが, 従来の方法では撮像に時間がかかるために嚥下運動の描出は難しかった. 今回われわれは, 同期サンプリング法を応用した高速シネMRIを用いて実時間での嚥下運動を再構築し舌運動の3次元動画像を得たので報告する. 対象は個性正常咬合を有する健常成人1名(25歳, 男性)である. MRI装置は島津-マルコーニMAGNEX ECLIPSE 1.5T Power Drive 250を使用した. 被験者はMRI装置内で仰臥位となり, 外部トリガーの信号に合わせて256回嚥下動作を行った. スライス厚さは5mmとし, マルチスライス法を用いて正中矢状面とその左右11.25mm外側の矢状面の計8断面を11msの時間差で撮像した. その結果, 各断層面につき33msに1枚(30フレーム/秒)計61枚の連続画像が得られたので動画として再構築した. 検査項目は(1)3D-MRIでの嚥下動態の観察 (2)舌尖部, 舌背前方部, 舌背中央部, 舌背後方部の4点における舌と口蓋の接触関係の観察 (3)舌背が嚥下開始後最も陥凹するまでの時間の計測の3項目とした. その結果, (1)高速シネMRIを用いて食塊の口腔から咽頭, 食道への移送の様子を描出することができた. (2)舌尖部では5フレーム目(165ms後), 舌背前方部では6フレーム目(198ms後), 舌背中央部では11フレーム目(363ms後), 舌背後方部では12フレーム目(396ms後)に舌背が最も陥凹しており, 時間経過とともに最深陥凹部が舌後方に移動していることがわかった. 以上の結果から, 今後, 本法をさらに発展させることでより詳細な嚥下運動が明らかにできるものと考えられた.
ISSN:1343-8441