I-P4-15 胃瘻造設後に3食自力経口摂取可能となった症例
重度の高次脳機能障害の影響により, 先行期, 準備期に障害を認め, 十分な食事量が確保できず胃瘻造設に至ったが, その後3食自力経口摂取可能となった症例を経験した. 【症例】52歳, 女性, H14.4.8くも膜下出血発症. H14.7.18当院入院. 指示理解困難であり, 発語は全くみられず, 声かけに対する反応も不良. 【経過】H14.8.6より直接訓練開始するも, 摂取量向上せず, 今後も経口のみでの栄養摂取は困難と判断され, 10.1. 胃瘻造設. 経口摂取は精神機能の賦活と楽しみの確保, 機能維持を目的に, 間接訓練と併せて継続して行った. 胃瘻造設後, 準備期に改善を認め, 摂取量...
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Published in | 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 7; no. 2; p. 213 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本摂食・嚥下リハビリテーション学会
2003
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Online Access | Get full text |
ISSN | 1343-8441 |
Cover
Summary: | 重度の高次脳機能障害の影響により, 先行期, 準備期に障害を認め, 十分な食事量が確保できず胃瘻造設に至ったが, その後3食自力経口摂取可能となった症例を経験した. 【症例】52歳, 女性, H14.4.8くも膜下出血発症. H14.7.18当院入院. 指示理解困難であり, 発語は全くみられず, 声かけに対する反応も不良. 【経過】H14.8.6より直接訓練開始するも, 摂取量向上せず, 今後も経口のみでの栄養摂取は困難と判断され, 10.1. 胃瘻造設. 経口摂取は精神機能の賦活と楽しみの確保, 機能維持を目的に, 間接訓練と併せて継続して行った. 胃瘻造設後, 準備期に改善を認め, 摂取量も向上してきた為, 段階的摂食訓練を行った. その後, 先行期にも改善を認め, 食事動作の獲得に至り, 胃瘻造設より3ヶ月程で自力で3食経口摂取可能(全粥, ミンチ, 水分無調整)となった. 【考察】胃瘻により十分な栄養と水分摂取が可能となり全身状態が安定したことが, 精神機能及び嚥下機能の向上に繋がったと考えられる. また胃瘻造設後も機能面の改善を見落とすことなく状況の変化に即したアプローチができたことも重要な点であった. 本例は, 両片麻痺, ADL全介助レベルでありながら, 自力での経口摂取という主体的な活動を獲得することができた. このことは今後の本例の嚥下機能及び活動性の維持向上においても非常に意義深いものになったと考える. 嚥下障害のリハにおいては, 単に安全に飲み込めるようになるといった機能面の改善のみに視点が向けられがちである. しかし, 食事をADLにおける諸活動の一つとして捉え, この活動を向上させることが嚥下機能の維持改善, 更には患者の活動性全般の向上にもつながるといったリハ的な視点を持って取り組むことが重要である. |
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ISSN: | 1343-8441 |