気管食道痩閉鎖術後に食道入口部開大の悪化を呈した小脳出血・嚥下障害症例の経験

成人気管食道痩は気管切開や挿管の合併症として報告されている. 今回, 気管食道痩閉鎖術後に嚥下障害の悪化を呈した小脳出血症例を経験したので報告する. 51歳男性. 1999年8月10日A病院にて小脳血管芽細胞腫摘出術施行. 同日夜, 小脳出血をきたし意識と呼吸が低下, 挿管, 血腫除去術を施行. 8月16日気管切開, 10月22日胃痩造設. 12月より経口摂食訓練を開始. 2000年10月6日当院に転院. 入院時, 失調性の口腔顔面運動障害, 軟口蓋挙上不全, 湿性嘆声が認められ, VF検査では軽度の口腔咽頭嚥下障害とわずかの誤嚥, 気管食道痩が認められた. 精査の結果は輪状軟骨の融解で, 1...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 5; no. suppl; p. 114
Main Authors 金井日菜子, 奥平奈保子, 山本圭子, 星野由香, 藤谷理恵, 藤谷順子, 岡田和也, 中原はるか, 田山二朗
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2001
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ISSN1343-8441

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Summary:成人気管食道痩は気管切開や挿管の合併症として報告されている. 今回, 気管食道痩閉鎖術後に嚥下障害の悪化を呈した小脳出血症例を経験したので報告する. 51歳男性. 1999年8月10日A病院にて小脳血管芽細胞腫摘出術施行. 同日夜, 小脳出血をきたし意識と呼吸が低下, 挿管, 血腫除去術を施行. 8月16日気管切開, 10月22日胃痩造設. 12月より経口摂食訓練を開始. 2000年10月6日当院に転院. 入院時, 失調性の口腔顔面運動障害, 軟口蓋挙上不全, 湿性嘆声が認められ, VF検査では軽度の口腔咽頭嚥下障害とわずかの誤嚥, 気管食道痩が認められた. 精査の結果は輪状軟骨の融解で, 12月6日B病院にて気管食道痩閉鎖術(右側頚部からの筋弁による縫合閉鎖)を受けた. 12月27日当院帰院. 帰院後のVF検査では, 食道入口部が正中位では開大せず, 誤嚥が増悪, 60度仰臥位右向き条件でのみゼリー食の嚥下が可能であった. 直接的嚥下訓練および間接的嚥下訓練を開始した. 訓練開始後1ヶ月で60度仰臥位右向きでペーストミキサー食, 1.5ヶ月で75度仰臥位右向きで全粥軟菜, 3ヶ月で75度仰臥位正面向きでゼリー食, 全粥軟飯も若干の右向きで可能となった. 粘膜縫縮と筋層の裏打ちを行なった痩閉鎖術が, 右側食道入口部の開大不全の要因と推測された. 嚥下訓練により経口摂取可能となり右向き代償への依存は軽減した.
ISSN:1343-8441