嚥下障害患者における湿声の臨床的評価と音響解析の試み

嚥下障害が疑われた患者の湿声の有無と, VF検査時における咽頭部での貯留の有無との関連, および湿声の音響特徴の検討を行った. 対象は嚥下障害が疑われ, VFを施行した11名とした. 対象の疾患は脳卒中6名, 脳脊髄炎, ワレンベルグ症候群, パーキンソン病, 各1名などである. VF所見は咽頭部での貯留, 声門への侵入の有無をみた. 湿声はVF施行時の母音発声(/a:/)を収集し評価した. 音響解析は母音発声をサンプルとし, Sound Scope(GWINSTRUMENTS社)を用いた. 11名の内, 明かな湿声を示したのは4名であった. この4名は全員咽頭部での貯留が認められた. 2名の...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 5; no. suppl; p. 88
Main Authors 野崎康夫, 千坂洋巳, 松嶋康之, 井手睦, 佐伯覚, 蜂須賀研二
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2001
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Summary:嚥下障害が疑われた患者の湿声の有無と, VF検査時における咽頭部での貯留の有無との関連, および湿声の音響特徴の検討を行った. 対象は嚥下障害が疑われ, VFを施行した11名とした. 対象の疾患は脳卒中6名, 脳脊髄炎, ワレンベルグ症候群, パーキンソン病, 各1名などである. VF所見は咽頭部での貯留, 声門への侵入の有無をみた. 湿声はVF施行時の母音発声(/a:/)を収集し評価した. 音響解析は母音発声をサンプルとし, Sound Scope(GWINSTRUMENTS社)を用いた. 11名の内, 明かな湿声を示したのは4名であった. この4名は全員咽頭部での貯留が認められた. 2名の患者は軽度の湿声を示したが, 咽頭部での明かな貯留は認められなかった. 一方, 貯留を認めながら湿声を示さなかった症例が2名いた. 明かな湿声を示した4名の内, 誤嚥の所見があったのは3名であった. 湿声の音響分析では, 高周波数成分の減弱などの特徴があった. 今回の結果は, 湿声は咽頭部での食塊の貯留との関連が強かった. しかし, 一方で対応しない症例が存在したが, このことは湿声のメカニズムを解明する上でのヒントになると思われた. 湿声の臨床的評価は日常生活上でのスクリーニング検査の一つとして有用と考えられた. 評価の精度を高めていくことが今後の課題である.
ISSN:1343-8441