検査食の粘弾性と嚥下障害の重症度

嚥下障害患者では食物の種類によって嚥下困難の程度が異なることは良く知られている. しかし従来のX線ビデオ透視(以下VF)検査法では検査食の物性や素材を規格化しないため食物のどの性質が嚥下機能に影響を与えているかについては不明であった. そこで, われわれは物性を規格化した検査食を用い, 検査食の粘弾性と嚥下の定性的評価との関連を検討したので報告する. 対象症例は脳血管障害により嚥下障害を認めた患者172例であった. 検査食は付着性を50J/m3以下と低くし, 粘弾性のみを変化させた4種類のイオパミドール含有寒天ゼリーである. 検査食の動的粘弾性については周波数依存性試験によって測定した. これ...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 5; no. suppl; p. 79
Main Authors 小澤素子, 道脇幸博, 横山美加, 衣松令恵, 道健一, 稲川利光, 片口真美恵, 埋橋祐二, 小島正明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 2001
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ISSN1343-8441

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Summary:嚥下障害患者では食物の種類によって嚥下困難の程度が異なることは良く知られている. しかし従来のX線ビデオ透視(以下VF)検査法では検査食の物性や素材を規格化しないため食物のどの性質が嚥下機能に影響を与えているかについては不明であった. そこで, われわれは物性を規格化した検査食を用い, 検査食の粘弾性と嚥下の定性的評価との関連を検討したので報告する. 対象症例は脳血管障害により嚥下障害を認めた患者172例であった. 検査食は付着性を50J/m3以下と低くし, 粘弾性のみを変化させた4種類のイオパミドール含有寒天ゼリーである. 検査食の動的粘弾性については周波数依存性試験によって測定した. これらの検査食を用いてVF検査を行い, 嚥下の重症度は「異常なし」, 「喉頭侵入」, 「気管内侵入」の3段階に評価した. 気管内侵入については, 最も粘弾性が低い検査食1では35%であったが検査食2, 3, 4の順に23%, 21%, 16%と減少していた. 検査食の種類による定性的評価の差に比較した結果, 検査食4と検査食1, 2, 3および検査食1と3との間で明らかな有意差が認められた. また, スペアマンの順位相関検定を行った結果, 検査食の種類と定性的評価との間に相関が有意に認められた. 検査食の粘弾性が高くなるにつれ, 誤嚥の危険性が低下すると考えられ, 検査食の粘弾性と嚥下障害の重症度との間の関連性が明らかとなった.
ISSN:1343-8441