重症心身障害児・者の嚥下評価

【目的】嚥下検査と臨床像との関係を明らかにするためにVideofluolography(以下VF)上, 食道入口部に食塊が貯留し, 輪状咽頭筋弛緩不良所見を認めた症例をとりあげ, 臨床的特徴の有無について検討した. 【方法】1998年5月から1999年3月の期間にVFを施行した重症心身障害児・者, 29例中, 上記所見を認めた4例. 臨床像は原因疾患, 気道症状など合併症状を検討した. VF上, 全例に口腔期異常, 咽頭期の喉頭挙上開始遅延, 喉頭蓋谷や梨状窩への残留が認められ, 誤嚥を示した. 【結果】(症例1)13歳女児. 脳性麻痺. 点頭てんかん. 2歳から喘息, 肺炎繰り返す, 6歳下...

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Published in日本摂食・嚥下リハビリテーション学会雑誌 Vol. 3; no. 2; pp. 96 - 97
Main Authors 井合瑞江, 山田美智子, 山下純正, 宮里寿々子, 岩本弘子, 半澤直美, 平井孝明, 脇口恭生, 鈴木奈恵子
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本摂食・嚥下リハビリテーション学会 1999
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Summary:【目的】嚥下検査と臨床像との関係を明らかにするためにVideofluolography(以下VF)上, 食道入口部に食塊が貯留し, 輪状咽頭筋弛緩不良所見を認めた症例をとりあげ, 臨床的特徴の有無について検討した. 【方法】1998年5月から1999年3月の期間にVFを施行した重症心身障害児・者, 29例中, 上記所見を認めた4例. 臨床像は原因疾患, 気道症状など合併症状を検討した. VF上, 全例に口腔期異常, 咽頭期の喉頭挙上開始遅延, 喉頭蓋谷や梨状窩への残留が認められ, 誤嚥を示した. 【結果】(症例1)13歳女児. 脳性麻痺. 点頭てんかん. 2歳から喘息, 肺炎繰り返す, 6歳下咽頭チューブ. 12歳経管栄養併用. 左凸側彎, 常に喘鳴, 陥没呼吸, 吸引頻回. VF上, 舌根から中咽頭に波状の筋収縮繰返し, 呼吸運動時喉頭部の上下動が目立つ. (症例2)13歳女児. 脳性麻痺. 1歳より肺炎, 喘息, 下咽頭チューブ使用. GER, 9歳経管栄養のみ. 左凸側彎, 胸郭扁平, 吸気性陥没呼吸常にあり. (症例3)23歳女児. 低酸素性脳症後遺症(11ヶ月心臓手術後). 2歳から下気道感染, 22歳経管栄養のみ. 左凸側彎, 胸郭変形中等度, 常に喘鳴, 吸気性陥没呼吸軽度. (症例4)5歳女児. 脳性麻痺・点頭てんかん. 筋緊張強く, 嘔吐, 気道感染. 左凸側彎, 胸郭扁平, 常に喘鳴あり, 体重増加不良. GER. 吸気性陥没呼吸著明, 呼吸運動時の喉頭上下動が著しい. 画像所見では大脳萎縮は全例, 視床基底核病変は2例で認められた. 【考察】協調的な輪状咽頭筋弛緩が得られず, 誤嚥を認めた症例は全例が, 吸気性呼吸障害が強い臨床像であった. 呼吸に伴う喉頭上下動が著明, 胸郭扁平, 頚部後屈位, 喘鳴を伴い, GERや気道感染・喘息をくり返し, ますます臨床的重症度を増す経過であった. 重症児の食道入口部食塊貯留所見は成人球麻痺時の輪状咽頭筋弛緩不全とは異なり, 複合的要因で生じる一所見であり, 合併障害の重複した症例, 特に呼吸との関係の深い所見といえる. 姿勢変換による筋弛緩により所見が改善された症例もあり, 生活の質向上につながる試みが期待された.
ISSN:1343-8441