術前後での頚部筋力の変化

昨年の本学会で1)頚部筋力は年齢により変化しない. 2)頚部に疾患を有する患者は, 頚部伸展筋力の低下が著しいことを報告した. そこで今回は, 頚部に疾患を有し手術適応となった患者の頚部屈伸筋力を測定し, 術前の筋力が術後どのようにして変化していくかを明らかにすることを目的とした. 健常群12名(男性5, 女性7). 年齢68±6歳. 疾患群は, 当院で頚部に対して手術を施行した患者12名(男性6, 女性6). 年齢62±11歳. 疾患手術の内訳は, 頚椎症性脊髄症で椎弓形成術を行った患者10名. 頚髄腫瘍で腫瘍摘出術を行った患者2名を対象とした. HOGGAN HELTH社製MICROFET...

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Published in理学療法学 Vol. 31; no. suppl-2.2; p. 459
Main Authors 本田憲胤, 武田芳夫, 濱口理香, 斉藤務, 濱村和恵, 澤田優子, 西野仁, 浜西千秋, 松村文典
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2004
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Summary:昨年の本学会で1)頚部筋力は年齢により変化しない. 2)頚部に疾患を有する患者は, 頚部伸展筋力の低下が著しいことを報告した. そこで今回は, 頚部に疾患を有し手術適応となった患者の頚部屈伸筋力を測定し, 術前の筋力が術後どのようにして変化していくかを明らかにすることを目的とした. 健常群12名(男性5, 女性7). 年齢68±6歳. 疾患群は, 当院で頚部に対して手術を施行した患者12名(男性6, 女性6). 年齢62±11歳. 疾患手術の内訳は, 頚椎症性脊髄症で椎弓形成術を行った患者10名. 頚髄腫瘍で腫瘍摘出術を行った患者2名を対象とした. HOGGAN HELTH社製MICROFET2を使用し被検者に必要な説明を行い, 練習(屈曲伸展各1回)の後, 頚部の屈曲伸展を等尺性で3回測定しその最高値を求めた. 測定時期は術前に1回, 術後1週おきに4週までの計5回測定した. 術前より術後の筋力増強訓練の方法を指導し, 術後ドレナージチューブを抜去した術後第2病目より等尺性で疼痛自制内の筋力増強訓練を行った. 術前から術後4週までの筋力の経時的変化と屈伸比(extension/flexion以下E/F比)を健常群と比較した. 統計処理はエクセル統計を使用しStudentのt検定を用い有意水準を5%とした. 健常群の屈伸筋力(N)は89±25, 202±58, E/F比は2. 3±0. 6であった. 症例群の屈曲筋力平均値は術前から順に90, 66, 82, 95, 103℃伸展筋力平均値は151, 76, l13, 135, 157. E/F比は19, 1, 2, 1. 4, 1. 5, 1. 6となった. 屈曲筋力は術前に比べ術後1週目で有意に低下(p<0. 05), 術後4週目で有意に増加(p<0. 05)しており, 伸展筋力は術後1週目で有意に低下(p〈0. 01)するが術後4週で術前筋力に回復した. E/F比は術後4週が経過しても健常者と比較して有意に低下(p<0. 01)していた. 当院での頚椎に対する手術は, 項靭帯を温存し頚部の伸筋に対する侵襲を最小限にしている. それにより術後プログラムでは, 多くの症例で術後第2病目より端座位, 第3病目より訓練室でリハビリを開始し, 約半数で第3病目に立位が可能である. 入院期間も短縮され術後13病目で退院する患者もいる. 今回の結果から術後4週で筋力は術前まで回復しているものの, 健常群より有意に伸展筋力は弱くE/F比は小さい. E/F比の低下は, 頭頚部が不安定になり頭痛や肩こりを引き起こす原因の一つと考えられ, 以内らも術後の肩こりと頚部筋力の関連性が示唆されると述べている. 今回の結果から術前, 術直後からは言うまでもなく, 退院後も頚部伸展筋力増強訓練の必要性が示唆される.
ISSN:0289-3770