脳卒中片麻痺者における実用歩行レベルの目安について(第2報)

第38回理学療法学術大会において我々は臨床の場面で用いられている評価を使用し, 脳卒中片麻痺者の実用歩行レベル目安の策定を行った. しかし, これらの値が実際に活用可能かどうかの疑問が残った. そこで本研究では, これらが実際の臨床場面で応用可能かどうかの検討を行い若干の知見を得たので報告する. 当院入院中, 外来通院及び通所リハビリテーション利用で何らかの形で歩行可能な群23名に対し, 実生活場面で移動を歩行のみで実施している群(IG群), 歩行と車椅子を併用している群(MG群)の2群に分け, i)10m歩行速度実計測値, ii)脳卒中機能評価表(以下SIAS), iii)頚体幹骨盤帯運動機...

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Published in理学療法学 Vol. 31; no. suppl-2.2; p. 310
Main Authors 新垣盛宏, 渡真利美幸, 千葉奈美, 金澤寿久, 仲栄真勝, 嶋田智明
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2004
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ISSN0289-3770

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Summary:第38回理学療法学術大会において我々は臨床の場面で用いられている評価を使用し, 脳卒中片麻痺者の実用歩行レベル目安の策定を行った. しかし, これらの値が実際に活用可能かどうかの疑問が残った. そこで本研究では, これらが実際の臨床場面で応用可能かどうかの検討を行い若干の知見を得たので報告する. 当院入院中, 外来通院及び通所リハビリテーション利用で何らかの形で歩行可能な群23名に対し, 実生活場面で移動を歩行のみで実施している群(IG群), 歩行と車椅子を併用している群(MG群)の2群に分け, i)10m歩行速度実計測値, ii)脳卒中機能評価表(以下SIAS), iii)頚体幹骨盤帯運動機能評価表(以下NTP stage), iv)機能自立度評価表(以下FIM)について先行研究データーとの比較を行いV)さらに先行研究では有意差を得られなかった歩行率, 及び歩行耐久性の指標として6分間歩行距離に関して自立の指標となりうるか否かの検討を行った. 統計学的検定はMann-Whitneyを用い検討した. 先行研究及び今回の研究結果から有意差の得られた項目に対してそれぞれ危険率5%にて推定値を算出し, 比較を行った. 結果, 10m歩行速度:21秒未満/27. 33秒未満, NTPstage:5以上/5以上, SIAS総得点:54点以上/45点以上, FIM総得点115点以上/114点以上と先行研究の推定値とほぼ同様の結果が得られた. さらに今回の研究結果から6分間歩行距離(142. 33m以上), 歩行率(75. 3steps/min以上)にそれぞれ有意差が認められた. しかし, 対象者の中にはこれらの推定値を満たしていても歩行が自立していないケースが見られた. 今回我々の先行研究により得られたデーターが実際の臨床場面で活用できるか否かを検討した. 両者の比較からそれぞれの項目で得られた結果の中から特にNTPstage, SIASにおける体幹機能の両項目ともに有意差が認められ, このことより実用歩行レベルの目安として体幹機能が大きく関与していることが示唆された. また, 今回各項目の推定値を満たしているにも関わらず歩行自立に至っていないケースが見られたが, その要因として, 半側空間失認などの高次脳機能障害の有無が関与している可能性も考えられるためさらに詳細な検証が不可欠である.
ISSN:0289-3770