483 集中したPTにより発症後1年から運動・嚥下機能障害が急速に改善した脳幹梗塞後遺症の1症例
脳幹梗塞により, 約1年間寝たきりおよび摂食嚥下が困難な状態から, 集中的PTにより車椅子上座位での摂食が可能になった1症例の報告を通じて, 障害が固定しつつある時期における集中的円の意義を提示する. 55歳, 男性. H14. 4. 26クモ膜下出血にてA病院入院. 外科的処置を経て経過良好であったが, 6. 15脳幹梗塞発症後に意識レベル低下(JCS200), 四肢麻痺が出現, 6. 21気管切開経管栄養となり寝たきり状態となる. 11. 5水頭症併発, H15. 2. 6喉頭狭窄症にて嚥下困難によりTチューブ留置後, 嚥下アプローチを行うも気切部より食物の漏出あり中止. H15. 5....
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Published in | 理学療法学 Vol. 31; no. suppl-2.1; p. 242 |
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Main Authors | , , , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
2004
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Summary: | 脳幹梗塞により, 約1年間寝たきりおよび摂食嚥下が困難な状態から, 集中的PTにより車椅子上座位での摂食が可能になった1症例の報告を通じて, 障害が固定しつつある時期における集中的円の意義を提示する. 55歳, 男性. H14. 4. 26クモ膜下出血にてA病院入院. 外科的処置を経て経過良好であったが, 6. 15脳幹梗塞発症後に意識レベル低下(JCS200), 四肢麻痺が出現, 6. 21気管切開経管栄養となり寝たきり状態となる. 11. 5水頭症併発, H15. 2. 6喉頭狭窄症にて嚥下困難によりTチューブ留置後, 嚥下アプローチを行うも気切部より食物の漏出あり中止. H15. 5. 5. 8胃瘻造設. H15. 5. 28加療目的にて当院転院となる. H15. 5. 29当院PT開始. 右側により強い麻痺を認め, 下肢伸展拘縮著明, 頚定自力座位保持不能, 発声不可能だがコミュニケーション可能. 嚥下困難で, 嚥下検査(以下VF)で, 嚥下反射の著しい遅延による誤嚥を認めるが, 冷温食材では誤嚥が少ないことが確認された. 口腔所見では右優位の頬筋の筋力低下, 舌筋の萎縮と右変位, 口蓋垂の右変位が認められた. 以上の初期評価から, 車椅子生活と嚥下機能改善を目標にし, 他動ROM, 座位での抗重力的アプローチ, および口腔アイスマッサージ, 頬筋筋力強化, 舌運動の促進に加え歯科医による週1回の口腔ケア, 妻による口腔内ブラッシングを行った. その結果4ヶ月後に, ヘッドレスト無しの車椅子で座位がとれ左上肢での駆動が開始でき, また舌口蓋垂右変位の改善と嚥下反射誘発の容易化により, 左上肢で改良スプーンにてゼリー摂取が監視下で可能になるという著明な改善が得られた. 液体の誤嚥の可能性はあるものの, ゼリーでは誤嚥が殆ど無いことがVFで確認された. 1年間の寝たきり状態から集中したPTにより短期間で運動嚥下機能共に順調な改善をみせた. これは年齢の若さ, 知性が保たれ意欲的, かつ妻が協力的であったという条件下で, チームでの客観評価をもとに成果と目標を明確に提示しPT場面以外に病室での自己実施プログラムの継続が可能であったことが要因といえる. その結果, 四肢体幹の機能頚部コントロール獲得が車椅子座位機能を保障し, それが基礎となり嚥下機能を変化させたと考えられる. 嚥下機能自体の変化については口腔内ケアにより種々の刺激が入りやすい環境の中での集中したアプローチにより, 舌口腔の感覚および筋萎縮が改善したと考えられる. 1. 障害固定期であっても集中的PTにより運動機能障害, 摂食嚥下障害の回復を促すことができる. 2. VF所見等により目的と成果を共有できたことが家族を含めたチームアプローチを強固に保障した. なお, 本発表にあたっては書面にて同意を得た. |
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ISSN: | 0289-3770 |