345 神経障害を合併した糖尿病患者の足底圧覚,関節可動域および足底圧の関係
糖尿病性神経障害を原因とする足部潰瘍の危険因子として, 足底圧上昇がある. また, 糖尿病性神経障害は関節可動域制限(以下LJM)を惹起する. このLJMが足底圧上昇に影響を及ぼすといわれ, 第一中足趾節関節(以下FMPjt)や足関節のLJMと最大足底圧上昇との関連が指摘されている. しかし, 糖尿病患者に特徴的な足底圧異常(前足部圧上昇や足趾部/前足部荷重圧比の減少)との関係は明確でない. また, 我々が健常者で行った検討では, 特徴的な足底圧異常は足関節制限時に発生した. これらを踏まえ, 我々は神経障害を合併した糖尿病患者においてUMが足底圧に与える影響を明確にするために研究を行った....
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Published in | 理学療法学 Vol. 31; no. suppl-2.1; p. 173 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
2004
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ISSN | 0289-3770 |
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Summary: | 糖尿病性神経障害を原因とする足部潰瘍の危険因子として, 足底圧上昇がある. また, 糖尿病性神経障害は関節可動域制限(以下LJM)を惹起する. このLJMが足底圧上昇に影響を及ぼすといわれ, 第一中足趾節関節(以下FMPjt)や足関節のLJMと最大足底圧上昇との関連が指摘されている. しかし, 糖尿病患者に特徴的な足底圧異常(前足部圧上昇や足趾部/前足部荷重圧比の減少)との関係は明確でない. また, 我々が健常者で行った検討では, 特徴的な足底圧異常は足関節制限時に発生した. これらを踏まえ, 我々は神経障害を合併した糖尿病患者においてUMが足底圧に与える影響を明確にするために研究を行った. 対象は神経障害を持つ2型糖尿病患者, 男性8例, 女性10例, 年齢は67.2±9.2歳であった. 方法は, まずmonofilamentによる足底圧覚の計測を行い脱失群9例(5.07・6.65), 鈍麻群9例(4.56)に分類し, 関節可動域(足関節背屈底屈, FMPjt伸展屈曲)を計測した. また, 歩行時の靴内足底圧も計測し, 最大足底圧, 足底各部位の最大圧(足趾部, 前足部, 中足部, 踵部), 前足部最大圧に対する足趾部最大圧の比を抽出した. 2群間でLJM足底圧を比較した. また, 各関節可動域のLJMの有無で足底圧各値を比較した. 1)足底圧覚と関節可動域の比較. 脱失群は鈍麻群と比較して, 足関節背屈(脱失群14.1±4.4°vs鈍麻群18.6±7.4°;P<0.05), FMPjt伸展(72.7±16.5°vs87.5±14.8°;p=0.02), FMPjt屈曲(17.3±13.6°vs29.2±13.5°;P=0.04)の可動域が有意に減少していた. 足底圧覚とUMの間には足関節背屈(rs=-0.41, P=0.02)とFMPjt伸展(rs=-0.48, P<0.01)で有意な逆相関が認められた. 2)足底圧覚と足底圧の比較. 脱失群は鈍麻群と比較して, 最大足底圧が有意に高かった(4.1±1.4kg/cm2 vs3.0±1.1kg/cm2;P=0.02). また, 足底圧覚と最大足底圧の間には有意な相関があった(rs=0.41, P=0.02). 3)各関節可動域と足底圧各値の比較. 足関節背屈において, LJMが存在する例では最大足底圧が有意に高かった(LJMあり4.0±1.3vs LJMなし2.9±1.1;P=0.02). 足関節背屈可動域と最大足底圧(rs=-0.46, P<0.01)前足部最大圧(rs=-0.35, P=0.04)の間に有意な逆相関が認められた. 足関節底屈においては, LJMが存在する例では最大足底圧(5.1±0.9vs3.4±1.2;P=0.02)と前足部最大圧(4.7±0.6vs3.1±L4;P=0.045)が有意に高かった. FMPjtにおいて, 足底圧に有意差はなかった. 1)足底圧覚脱失群は関節可動域が減少し, 足底圧が高かった. 2)FMPjtではなく足関節可動域が足底圧の上昇と関連していた. また, 糖尿病患者に特徴的な前足部圧上昇も足関節可動域と関連していた. |
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ISSN: | 0289-3770 |