213 摂食・嚥下障害とADLの関連-むせの頻度とFIMによる検討
ADLの高い者が摂食嚥下障害の可能性が低いことは臨床経験である. しかし, ADLのどの項目がどの程度であれば, 摂食嚥下障害が生じる可能性が高くなるかを調査した報告はほとんどみられない. そこで本研究では, 摂食嚥下障害とADLとの関連を明らかにすることを目的に, 誤嚥を疑う重要なサインであるむせの有無とADLのレベル, 及び痴呆の有無との関連を検討した. 対象は, 介護老人保健施設に入所している92名(男性20名, 女性72名), 平均年齢82.8±84歳であった. むせの評価は, 外部観察により食事開始時から終了時までのむせの合計回数を調査し, むせがみられない「無し」, 1~4回むせる...
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Published in | 理学療法学 Vol. 31; no. suppl-2.1; p. 107 |
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Main Authors | , , , , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
2004
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Summary: | ADLの高い者が摂食嚥下障害の可能性が低いことは臨床経験である. しかし, ADLのどの項目がどの程度であれば, 摂食嚥下障害が生じる可能性が高くなるかを調査した報告はほとんどみられない. そこで本研究では, 摂食嚥下障害とADLとの関連を明らかにすることを目的に, 誤嚥を疑う重要なサインであるむせの有無とADLのレベル, 及び痴呆の有無との関連を検討した. 対象は, 介護老人保健施設に入所している92名(男性20名, 女性72名), 平均年齢82.8±84歳であった. むせの評価は, 外部観察により食事開始時から終了時までのむせの合計回数を調査し, むせがみられない「無し」, 1~4回むせる「時々」, 5回以上むせる「頻回」の3群に分類した. ADLの評価については機能的自立度評価(以下, FIM)の運動項目を用い, 「自立」, 「部分介助」, 「完全介助」の3段階に分類した. 痴呆の重症度についてはNMスケールを用いた. FIMとNMスケールは担当の介護福祉士と理学療法士が共同で評価した. 統計処理は, κ2検定を用い, 有意差が認められた場合は残差分析を行なった. 有意水準は5%未満とした. FIMの13運動項目のうち, むせの有無と関連が認められたのは, 「更衣(下半身)」「階段」以外の11項目であった. 「食事」「更衣(上半身)」「ベッド, 椅子, 車椅子移乗」「トイレ移乗」「歩行, 車椅子移動」は自立, 「清拭」「トイレ動作」「排尿コントロール」「排便コントロール」は部分介助では, むせの無い者が有意に多かった. 一方, 「食事」は部分介助, 「整容」「清拭」「更衣(上半身)」「トイレ動作」「排尿コントロール」「排便コントロール」「ベッド, 椅子, 車椅子移乗」「浴槽, シャワー移乗」「歩行, 車椅子移動」が完全介助では, むせを有する者が有意に多かった. そのうち, 「食事」では部分介助, 「整容」「排尿コントロール」では完全介助の者には頻回なむせが有意に多かった. また, 今回の調査では, 痴呆の有無とむせの有無には関連が認められなかった. 「食事」「更衣(上半身)」「ベッド, 椅子, 車椅子移乗」「トイレ移乗」「歩行, 車椅子移動」は自立レベル, 「清拭」「トイレ動作」「排尿コントロール」「排便コントロール」は部分介助レベルを維持することが, 誤嚥や窒息などを予防するための理学療法の目標であると考えられる. さらには, 「食事」では部分介助レベル, 「整容」「排尿コントロール」では完全介助レベルに低下しないことが重要であると考えられる. |
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ISSN: | 0289-3770 |