76 新体操選手の柔軟性と腰椎可動性について
新体操は「美の追求」をテーマとし, 身体の高度な柔軟性が必要とされ, 特有の傷害が認められる. 当院のこれまでの調査により腰部足関節足部の順で発生頻度が高い傾向がみられた. そこで今回は腰痛と腰椎の可動性について樟討した. 腰部に疼痛を有する国体出場レベルの高校女子新体操選手9人(年齢平均16.4±1.4歳, 経験年数8.4±7.4年)をA群. 運動習慣の無い腰部に疼痛を有する女性9人(年齢平均21.8±1.2歳)をB群とした. いずれの対象についてもレントゲン撮影の承諾を得た. 自然立位(neutral以下N), 立位最大体前屈時(maximum flcxion以下MF), 立位最大体後屈時...
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Published in | 理学療法学 Vol. 31; no. suppl-2.1; p. 38 |
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Main Authors | , , , |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
2004
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ISSN | 0289-3770 |
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Summary: | 新体操は「美の追求」をテーマとし, 身体の高度な柔軟性が必要とされ, 特有の傷害が認められる. 当院のこれまでの調査により腰部足関節足部の順で発生頻度が高い傾向がみられた. そこで今回は腰痛と腰椎の可動性について樟討した. 腰部に疼痛を有する国体出場レベルの高校女子新体操選手9人(年齢平均16.4±1.4歳, 経験年数8.4±7.4年)をA群. 運動習慣の無い腰部に疼痛を有する女性9人(年齢平均21.8±1.2歳)をB群とした. いずれの対象についてもレントゲン撮影の承諾を得た. 自然立位(neutral以下N), 立位最大体前屈時(maximum flcxion以下MF), 立位最大体後屈時(maximum extension以下ME)の3種のレントゲン撮影(撮影はレントゲン技師による)を行い, 各々の腰椎前彎角度(第1腰椎の上終板と平行なラィンと, 第1仙骨の上終板と平行なラインにそれぞれ垂線を引き, 2つの垂線が交わる角度)を計測した. 体幹下肢の柔軟性を計測するために下肢伸展挙上(straight-leg raisiig以下SLR)踵殿間距離(heel-buttock distance以下HBD)トーアステスト一指床間距離(finger-floor distance以下FFD)を用いた. A群B群で, NMFMEの腰椎前彎角度SLRHBDトーマステストFFDについて, 比較検討した. 統計処理はt検定を用い, 危険率5%未満を有意差ありとした. A群;B群間において, NMFの腰椎前彎角度, HBD, トーマステストでは有意差は認められなかったが, MEの腰椎前彎角度, FFD, SLRには有意差が認められた. A群B群間において, NMFの腰椎前彎角度には, 有意差が認められず, FFDSLRに有意差が認められた. よってA群のFFD値が大きいのは, 腰椎の可動性の問題ではなく, ハムストリングスの柔軟性が大きく関与していると示唆される. また, MEの腰椎前彎角に有意差が認められ, HBDトーマステストに有意差が認められなかった. よってA群の体幹伸展時には, 腰椎の可動性が大きく関与している, という事が示唆される. A群は, 新体操競技特性として全身的に高度な柔軟性が必要とされる. そのなかで, MF時は下肢の柔軟性により腰椎の可動性は過度には必要とされていないが, ME時は下肢の柔軟性にはA群B群に有意差が認められず, 腰椎の過度な可動性が必要とされる. よって腰椎前彎角の大きいA群は, 体幹後屈時に疼痛を誘発する者が多いと考らられる. 新体操選手のパフォーマンスには, 体幹後屈可動域は必要不可欠である. 今後新体操選手をケアする上で, 大腿四頭筋腸腰筋の大腿前方筋群の柔軟性向上を計ることが, 腰部へのストレスを軽減し, 一体幹後屈時の疼痛軽減へとつながるのではないかと考える. |
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ISSN: | 0289-3770 |