1 ラット膝関節固定後の長期間にわたる関節可動域訓練の効果-組織学・電気生理学的所見からの検討

ギプス固定や長期臥床などの不動化により引き起こされる廃用性筋萎縮, 関節拘縮はリハビリテーション分野において重要な問題であり, その予防, 治療の目的で我々理学療法士は関節可動域訓練(ROM訓練)を行っている. しかし関節の固定後, 短期間におけるROM訓練の効果を組織学的に検討した報告はいくつかあるが, 長期間に及ぶROM訓練の効果, その回復過程に注目した報告は少ない. また, 先行研究において演者らは, 8週間のROM訓練が関節可動域, 廃用性筋萎縮の改善に効果的であると報告したが, その回復は十分なものではなかった. そこで本研究では, 関節固定後の廃用性萎縮筋に対する長期間にわたるR...

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Published in理学療法学 Vol. 31; no. suppl-2.1; p. 1
Main Authors 磯山明宏, 水野雅康, 塚越卓, 谷本正智, 田村将良
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2004
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Summary:ギプス固定や長期臥床などの不動化により引き起こされる廃用性筋萎縮, 関節拘縮はリハビリテーション分野において重要な問題であり, その予防, 治療の目的で我々理学療法士は関節可動域訓練(ROM訓練)を行っている. しかし関節の固定後, 短期間におけるROM訓練の効果を組織学的に検討した報告はいくつかあるが, 長期間に及ぶROM訓練の効果, その回復過程に注目した報告は少ない. また, 先行研究において演者らは, 8週間のROM訓練が関節可動域, 廃用性筋萎縮の改善に効果的であると報告したが, その回復は十分なものではなかった. そこで本研究では, 関節固定後の廃用性萎縮筋に対する長期間にわたるROM訓練が組織学的, 電気生理学的にどのような影響をもたらすか検討した. 対象はWistar系雄ラット15匹を使用した. 無処置のラット3匹を対照群とし, 残りのラット12匹に対しネンブタールにて腹腔内麻酔した後, 右膝関節を最大屈曲位に保持し, キルシュナー鋼線にて大腿骨中央部から脛骨骨幹部を貫通し, 鋼線の先端を曲げ, 固定した. 4週間の固定後抜釘し, その後12週, 16週自然回復群(各3匹), 12週, 16週ROM群(各3匹)に振り分けた. ROM群には抜釘直後より75秒間の持続伸張を固定側のハムストリンブスに対して1セットにつき3回, これを朝, 夕の2セット, 週5回の頻度で行った. 実験終了後ハムストリングスの筋繊維径と膝関節の伸展角度, さらに単一膨線維の活動電位を分離同定可能な単一筋線維筋電図(SFEMG)の振幅(AMP), 持続時間(DUR), 筋線維伝導速度(CV)を水野の方法により測定した. 12週間めROM訓練により膝関節の伸展角度は按釘時62度から33度に変化し, 対照群の27度に近くなる傾向を示した. SFEMG所見においては抜釘時4.43mVのAMPが8.85mVに変化し, 対照群の12.96mVに近<なる傾向を示した. 同様にDURは3.27msccが2.79msecに変化し, 対照群の2.22msecに近づき, CVは11.83m/secが13.7m/secに変化し, 対照群の16.26m/secに近くなる傾向を示した. なおハムストリングスの筋練維径, 16週間のSFEMGの結果は現在集計中であり, 当日発表する予定である. 一般的にROM訓練は関節, 軟部組織の機能維持, 拘縮の矛防と改善, 運動感覚の維持, 循環状態の改善などといった効果が報告されている. 先行研究において演者らは, 4週間の膝関節固定後の萎縮したハムストリングスに対する8週間のROM訓練により, 筋線維径は対照群とほぼ同等にまで回復したが, SFEMG所見は十分に回復しなかった. すなわち, 廃用性萎縮筋の回復過程における形態と機能の解離を認めた. 今回の研究ではさらに長期間の迫跡調査により, 両者の解離について検討し, 12週の時点では解離の縮小を認めた.
ISSN:0289-3770