車いすの処方ポイント
車いすの機能・形状の変遷は, 健常者の移動機器における技術革新の影響も少なくはないが, それよりもむしろ障害者の生活圏の拡大へのニーズとそれに伴う環境適応の所産であるといえる. すなわち19世紀代の, 軽くて安価で自力駆動可能な車いすの普及や, 20世紀初頭の, 我が子を遠出させたい(生活圏の拡大)という障害児の父親の願いが契機となった折りたたみ式車いすの一般化, そして, 第二次世界大戦による多くの障害者のための車いすの大量生産化は, 障害者の活動範囲を拡大し, 障害者の自立の可能性を高めた. このような障害者の生活圏の拡大は, 拡大した生活環境の障害者視点での環境整備が押し進められるととも...
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Published in | 理学療法学 Vol. 27; no. suppl-3; p. 71 |
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Main Author | |
Format | Journal Article |
Language | Japanese |
Published |
日本理学療法士協会
2000
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ISSN | 0289-3770 |
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Summary: | 車いすの機能・形状の変遷は, 健常者の移動機器における技術革新の影響も少なくはないが, それよりもむしろ障害者の生活圏の拡大へのニーズとそれに伴う環境適応の所産であるといえる. すなわち19世紀代の, 軽くて安価で自力駆動可能な車いすの普及や, 20世紀初頭の, 我が子を遠出させたい(生活圏の拡大)という障害児の父親の願いが契機となった折りたたみ式車いすの一般化, そして, 第二次世界大戦による多くの障害者のための車いすの大量生産化は, 障害者の活動範囲を拡大し, 障害者の自立の可能性を高めた. このような障害者の生活圏の拡大は, 拡大した生活環境の障害者視点での環境整備が押し進められるとともに, 障害者の足である車いすの機能や形状にも, 拡大した生活環境に適応するような変化が求められてきた. このような車いすの機能進化の背景には, IL(Independent Living)運動, QOL, ノーマライゼーションの理念・運動の拡大がある. このような理念・障害者運動の進展・拡大を背景にした各疾患別の車いすの開発・発展過程を概観してみると, やはり各疾患別による障害特性(好発年齢層, 社会的役割自覚, 本人・家族の社会進出意欲・生活圏拡大意欲, 残存運動機能・生理機能の違いなど)が顕著にみられる. すなわち, 労働災害や戦争などによって障害を持つことになった比較的若く, 労働年齢層でもあり, 機能的残像能力も高く, かつ社会進出意欲の高い障害者における車いすの進化・発達にはめざましいものがあった. その代表が脊髄損傷である. 脊髄損傷者の車いすの機構やパーツ開発は, 社会進出のための対象施設環境への適合のためにまず始まり, さらに彼らのスポーツ領域への進出, 特に, 趣味的な領域ではなく競技スポーツヘの進出が, その車いすのパーツ, 機構の開発に拍車を駆けたといえる. |
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ISSN: | 0289-3770 |