ギランパレー症候群が発症したダウン症児の理学療法

ギランバレー候群(以下GBS)は小児に罹患した場合, 症状や治療方法は環境面の配慮を除けば成人とほぼ同様と考えられている. 今回, 我々は先天性疾患の1つであるダウン症候群(以下DS)にGBSを合併した症例の理学療法を経験した. DSは常染色体異常による精神運動発達遅滞を呈する疾患であり, 低緊張を伴いながらもおおよそ3歳頃に歩行獲得すると言われている. このようなDSの臨床上の特性と併せてGBSへの理学療法を考えていく点において, 若干の知見を得たので報告する. (症例紹介)男児1993. 6.23生. 診断名:DS, GBS(1998.9.3診断)病歴及び療育形態:(1ヶ月)心室中隔欠損症...

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Published in理学療法学 Vol. 27; no. suppl-2; p. 323
Main Authors 本澤由美子, 東浦徳也, 清水香奈子, 眞保実
Format Journal Article
LanguageJapanese
Published 日本理学療法士協会 2000
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Summary:ギランバレー候群(以下GBS)は小児に罹患した場合, 症状や治療方法は環境面の配慮を除けば成人とほぼ同様と考えられている. 今回, 我々は先天性疾患の1つであるダウン症候群(以下DS)にGBSを合併した症例の理学療法を経験した. DSは常染色体異常による精神運動発達遅滞を呈する疾患であり, 低緊張を伴いながらもおおよそ3歳頃に歩行獲得すると言われている. このようなDSの臨床上の特性と併せてGBSへの理学療法を考えていく点において, 若干の知見を得たので報告する. (症例紹介)男児1993. 6.23生. 診断名:DS, GBS(1998.9.3診断)病歴及び療育形態:(1ヶ月)心室中隔欠損症(手術必要なし), 環軸椎亜脱臼を合併. (1歳)運動面の遅れから当園にてPT開始. (2歳7ヶ月)独歩可能となりPT終結. (2歳11ヶ月)当園知的障害児通園施設に措置. (5歳4ヶ月)独歩不能となり当園肢体不自由児施設措置変更. (理学療法経過)<初回評価:GBS発症3ヶ月後>PT週1回実施. 全体的に低緊張であり, 台を使っての膝立ちまで可能であった. 座位, 四つ這い, 膝立ちは低緊張による腰椎前弩が見られ, いざり移動と四つ遭い移動を併用していた. PT目的は体幹・四肢の筋活動を賦活することにより支持性を高めていき, 同時に活動への興味を持たせながら立位・歩行への機能獲得を目指した. さらに保護者にはGBSの臨床症状と児の状態の変化を具体的に説明していくことを心掛けた. 〈4ヶ月後〉つかまり立ち, 膝歩きを獲得したが, 保護者が無理な介助歩行を行ったため過負荷による再悪化を指措した. <5ヶ月後>短距離での平地独歩可能となったが, 独歩は室内に限定することを指導した. <6ヶ月後>芝生での独歩を獲得し階段昇降も手すりを使用して可能となった. <7ヶ月後>家庭での無理な訓練により児に疲労が見られたため, 再度保護者に具体的指導を行った. <8ヶ月後>5分間の連続歩行が可能となった. <9ヶ月後>実用的な歩行が獲得され, 私立保育園に就園し, PT月1回の実施となり, 悪化, 再発は見られなかった. (考察及びまとめ)DSの理学療法は運動発達を促すことが主体となるが, その実施にあたっては臨床上の特性から興味, 意欲を高めていくことを前提として遊びを含めた活動が中心となる. 本症例はGBSが発症し歩行獲得に向けて, DSの特性を考慮しながら玩具を利用し設定場面に配慮して理学療法を行った. 同時に小児の理学療法を円滑にすすめるにあたっては保護者の協力が不可欠である. しかし運動面への不安や焦りを見せる保護者の中には, 機能獲得に向けて過剰な訓練を子どもに強いることがしばしばみられる. 本性例もその場面が見られ, 疲労による過用性筋力低下や過用性損傷による再発・再悪化を招く恐れが考えられた. このことについては疾病や児の状況さらにその具体的な対応方法について説明することにより保護者の理解が得られた.
ISSN:0289-3770